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バイクで日本一周してる女の子と仲良くなった話
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159 :譲二兄貴:2011/12/28(水) 15:48:41.45 ID:DK1TNxo90
一緒にレース出てたダチは何故か鈴菌の工場に就職して、離れ離れになっちゃったけど、今でも連絡を取り合ってる。

そいつが帰省する正月は欠かさず一緒に酒呑んでさ、昔話で盛り上がるのが年に一度の楽しみでな。

この前飲んだときは、譲二テメーガラクタハレなんざ買う金あったら、日本の誇りの、世界最速のハヤブサ買えゴルアって怒られたwww

まあ そいつもわかって言ってんだけどな、何に乗ろうが本人の自由で、趣味のバイクに貴賎なんて無いって事。


まあ それでここからが本題っていうか、お前は今、バイクで日本中を旅してるだろ?

基本的にツーリングって楽しい事なんだけどな、はじめて見る景色に初めて喰う料理。

初めて走る道に初めて会う奴、初めて・・・まあこれくらいにしとくかww

端から見るとお気楽だけどよ、まー、実際走ってると楽しい事ばかりじゃないよな。雨降れば冷たいし、日が暮れれば寒い、日が照れば暑いし。

泊りがキャンプなら尚更、テントは狭くて暑苦しいし、蚊だのブヨだのが入ってきたら最悪だべ?

まかり間違ってシュラフを雨で濡らしたりした日にゃあ・・・・・orz



160 :譲二兄貴:2011/12/28(水) 15:51:19.53 ID:DK1TNxo90
会う奴会う奴善人ばかりって訳じゃねーし、セコくてずるくて鬱陶しいライハのヌシみてえな連中だっている。

それにお前は若くて見栄えのいい女だから、俺には縁のねえトラブルや危険がいっぱいあっただろ?

でも お前は それに懲りて家に逃げ帰ったりしないで、こんな所で俺と酒飲んでケラケラ笑ってるwww

月並みな言い方だけどな、お仕着せの旅行じゃない旅って人を鍛えると思うんだよ。


しかも ただ鍛えられただけじゃなく色んな奴に出会って、ああ、特に俺みたいな変な男とかになwww

まあそれでだ、カネは掛かるけど、カネじゃあ買えねえモノ、思い出とか言う奴がたっぷりと脳みそに残る。


ちょっと話がずれるけどな、ナースログって言葉がアメリカだかカナダだかにあるんだと。

ちょっと有名な釣り好きの作家が書いた、アラスカでサケ釣る話しの中にあったクダリなんだけどな。

えっとたしか、まず寿命が来た大木が風でドカンと倒れるとだな、倒れた木を細菌とかバクテリアみてえなもんが分解し始めるわけだ。

腐り始めた木の栄養を目当てにアリやなんかの虫が集まって、その虫を食いに小鳥やねずみなんかが来て。その鳥やねずみを食いにタカやワシやクマーとかが来て、食物連鎖って奴がそこに起こって。



161 :譲二兄貴:2011/12/28(水) 15:52:49.62 ID:DK1TNxo90
倒れた木は ただ腐っていくように見えて、実は森の生態系を守る役割を果たしてる、って言う考え方らしい。

森を守る、看護する木、だからナースログ、って事らしい。


んで これを人間に当て嵌めるとだな、とにかく端から見ると無駄としか思えねー事ってあるだろ?

旅に出るにでもサケ釣りでも何でもいい、日々の仕事じゃない、ただ自分が楽しむ為だけの面倒事な。

でも それって無駄じゃないんだよな、仕事でちょっと余裕が出た時とか、どっかに出かけてるときとか、夜寝る前とか。

ふと思い出して楽しかった事を反芻するよな、それを思い出しただけで何だか楽しい気分になって。

死ぬまでに何回も、何十回も、何千回も、何万回も、何十万回も、思い出すんだよ、そのときの事を。

きつい時とか疲れたときとか、ムカつく時とか寂しい時とかにな、それを思うと少し気が楽になるんだよ。

そーいうマイナスの感情を抑えられる思い出があるって事はだ、これすなわち心の強さ、って事にならないか?



162 :譲二兄貴:2011/12/28(水) 15:54:42.79 ID:DK1TNxo90
まあそれでだ、このまま旅を続けて強くなって、実家に無事帰ってきたお前ならな。

旅の前は尻尾巻いて逃げてちまった事にも、落ち着いて対処出来るんじゃないか?

会社を継ぐも継がないも、結婚するもしないも、はっきりと意思表示できるんじゃないか?・・・・・・


・・・・・ああ、ついに言っちまった、あーやっぱり押し倒して中出し・・・・・もう遅いか・・・・・・。

これじゃあ冬美に帰って家を継げって、クドクド説教してるようなモンじゃねえか・・・・・。

冬美の手に握られたグラスも とうの昔に空になっていたが、ここまで注ぎ足そうとする素振りも見せなかった。

俺が真剣に話したから、真剣に聞いてくれたのだろう、・・・・・・・・・・何ていい女なんだ!!!!!!!


会話が切れて一分ほど経ってから、促して冬美の手からグラスを受け取り、ホットウィスキーを作って手渡した。

自分のグラスにもドボドボとバーボンを注ぎ、喉を通りやすいようにロックにする。

その後は打って変わって下らない事ばかり話しながら、ゲラゲラ笑って気が付いたら午前三時だった。

この夜は2人でバーボンを1本半消費し、朝五時近くになってから2人で仲良く居間で潰れた。

かろうじて持ってきた毛布を一枚ずつ被って雑魚寝し、俺はこの月曜、入社以来始めて会社をずる休みした。



165 :譲二兄貴:2011/12/28(水) 16:07:41.10 ID:DK1TNxo90
バーボン1本分の二日酔いにかろうじて打ち勝ち、朝八時半前に会社に休む旨の電話を入れることが出来た。

どうしても体調が悪くてすいませんと上司に平謝りし、電話を切った瞬間 再び落ちてしまった・・・。

次に目が覚めたのは昼十二時過ぎだった、ソファの上では冬美が まだうつ伏せになって寝ている。

まあ2人で安バーボン2本近く空けたからな・・・、このくらいは仕方ないだろう。

少しすると冬美も もぞもぞと起きだして来たが、流石にしんどそうだ。

結局ズル休みしてしまった格好なので、大っぴらに外に出歩くのもはばかられる。

この辺は妙に小心なんだよなあ俺って、多分厳しく鍛えられた柔道時代の影響だと思うんだけど。

同じく根が体育会系の冬美も その辺は心得ているのか、どこに行きたいとか何を食べたいとかは何も言わなかった。

んー、昼間は何をしていたんだったかなあ、前の晩の会話のインパクトが強すぎて あんまり憶えてないや。

夕方近くになってやっと物を食いたいような気分になって来たので、あっさりしたソバかなんかで夕食を済ませた。

流石にこの晩は2人ともノンアルコール、じっくり、ゆっくり、のんびりと時間を過ごした。



166 :譲二兄貴:2011/12/28(水) 16:09:24.51 ID:DK1TNxo90
十一時くらいまで とりとめない会話を交わし、2人で俺の部屋の同じベッドに寝た。

一応お休みのキスくらいはしたが、それ以上の事はしなかった。

どちらかが求めれば、どちらかが そんな素振りを見せれば、多分すぐにセックスが始まっていただろう。

でも2人とも もう、その週末の別れの日まで、お互いの体を求めるような事はしなかった。

もちろん健康な成人男子の俺にとって正直苦しくはあった、若くて健康な冬美だって同じようなモノだったかもしれない。

でも もう2人の間には暗黙の了解と言うか、お互いの心身ともに別れの準備をし始めている空気が流れていた。

間近に迫った別れ、恐らくは今生の別れに備え、お互いに心を強くしなければならない。

男と女が求め合って体を重ねれば、そこには情という至極厄介な奴が生まれる。生まれた情は ただでさえ辛い別れを、更に苦しく悲しいものにしてしまうだろう。

ろくに眠れずに悶々としながら朝を迎えてしまい、朝方になってようやくウトウトすることができた。

気が付くと隣に冬美は居らず、いつの間にか台所で朝飯を準備をしてくれていた。

その朝飯をぺろりと平らげて俺の好みの濃さに淹れてくれたコーヒーを飲んで会社に行った。

会社に向かう1BOXの中で いつものメロコアを流しながら、幸せってこんなもんなんだろうなとか。



167 :譲二兄貴:2011/12/28(水) 16:11:21.84 ID:DK1TNxo90
昨日 突然休んでしまった事を上司と同僚に平謝りし、その日は現場で一日汗をかいて働いた。

定時の五時は あっという間に過ぎたが、現場は片付いても事務所に残ってやるべき事が色々あった。

五時半くらいに休憩所でコーヒーを飲みながら冬美に電話し、遅くなる旨を伝えた。


俺『・・・・ってな訳でな、ちょっと遅くなりそうなんだわ、晩飯は適当に済ませといてくれ』

冬美『いやー、ちょっと位遅くても大丈夫ですよ、待ってますから。』

俺『いや、早くても九時くらいだぞ、多分、いいから先に食っててくれ』

冬美『わかりました、じゃあ無理しないで食べて待ってますね、・・・・譲二さん?』

俺『ん?どうした?』

冬美『残業、頑張って下さいね!』

俺『おう!ありがとな!じゃあ頑張ってくるわ!』


電話を切って周りを見ると同僚達がニヤニヤしている、あちゃー、顔に出てたかorz

照れ隠しに紙コップに残ったコーヒーを一息に飲み干し、勢い良くゴミ箱に叩き込んで事務所に戻った。

その勢いもあってか 普段より随分と早く仕事が進み、予想よりずっと早く八時半くらいには会社を出ることが出来た。

うーん、女の力って偉大だなあ、出来た女の励ましって、本当に力になるんだなあ。

これが話に聞く内助の功って奴なのかなあ、冬美がこのままうちに居てくれたらなあ・・・・

と、妄想のような繰言の様な、未練がましくみっともない事を考えずには、吉岡秀隆のナレーションを流さなければ居られない訳で。

九時前には うちに着き、玄関を開けると いきなり鼻にカレーの匂いが充満した。

ドアの音で気付いた冬美が玄関に現れ、満面の笑みでお帰りなさいと言って出迎えてくれた。



168 :譲二兄貴:2011/12/28(水) 16:12:47.15 ID:DK1TNxo90
冬美『お帰りなさい譲二さん、九時くらいに帰ってくるって踏んで、それに合わせてカレー作ってましたw』

俺『早くても九時って言ってたろーよ、じゃあ食わないで待ってたのか?』

冬美『はい、もうお腹ペコペコッす!、早く食べましょうよ!』

俺『おうwww、じゃあ今着替えてくるから、五分だけ待ってれ』

冬美『はーい、じゃあすぐ食べられるようにしておきますね!』


仕事着から普段着のジャージ上下に着替え、洗面所で手と顔を洗ってからテーブルに向かった。

テーブル上には すでに2人分のカレーとサラダが並べられ、後はグラスに好みの飲み物を注ぐだけだ。

俺は冷蔵庫から黒ラベルの大瓶を取り出し、目で聞いてから冬美のグラスにビールを注いだ。

ビンを受け取りたいような素振りをした冬実を軽い手振りで制して、自分のグラスにもビールを満たした。

それは俺が初めて知る、2人の力で作り上げる、自分の家庭の味だったのかもしれない。

子供が出来る前の夫婦2人だけの家庭って、こんなんなのかなあって、新鮮な感じだった。

もちろんこれは期間限定、もう数日だけの、夫婦ごっこのようなものだったのだが。

だからこそ あの秋二人で過ごした二週間は、強烈な記憶となっているのだろう。



>>次のページへ続く
 
カテゴリー:男女・恋愛  |  タグ:青春, 胸キュン, すっきりした話,
 


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