食べ終わった食器を片付けて、いつも通りぼくたちはベッドに入った
ぼくの下で何も知らずに喘ぐ彼女を見て、今更ながら罪悪感がこみ上げてきた
罪悪感をかき消すように、ひたすら腰を振っていた
彼女の好きなところは分かっていた
奥の方のおなか側にあるポイントを狙ってひたすら突いた
ぼくの汗が彼女のからだに落ちた
彼女は潤んだ目をこちらに向け、呂律の回らない声で、いや、いやと言っていた
終わったときには2人とも汗だくだった
ぼくは そのまま彼女の上に倒れこんだ
彼女はぼくの頭を優しく撫でて気持ちよかったよと言ってくれた
ぼくも気持ちよかったと答えて、扇風機を回して彼女に腕まくらをした
さっきまでとはまったく違う表情で笑っている彼女を見て、罪悪感は消えるどころかどんどん増していった
ぼくは自分のことしか考えていなかった
罪悪感から逃れたい一心だった
きのう先輩と会った
と言ってしまった
先輩の存在は付き合うまえに話をしていたので彼女も知っていた
高校時代のぼくのすべてで、ぼくのはじめての人だということも彼女は知っていた
彼女の表情が変わった
え?と彼女は言ったが、聞こえなかったわけではなかった
その証拠に彼女の顔はみるみる青くなっていき、ぼくの腕から抜けて背を向けた
ぼくは彼女の背中にむかってごめんと言ったが、彼女は何も言わなかった
ぼくは続けた
誕生日に連絡があったこと、2人で飲みにいったこと、そして告白されたこと
最近態度が変だったのは全部そのせいで、彼女には何も非がなかったということ
全部話したが、きのうのことだけは話せなかった
きみはどうしたいの
彼女は泣きながらなんとか声を絞り出した
どうしたいのかなんて、ぼくに選べる余地があると思えなかった
ぼくは浮気者なのだから、捨てるか続けるかあなたが選んでくれと言った
彼女はベッドから出て服を着はじめた
ぼくは半身を起こしてそれを眺めながら、なんであんなこと言ってしまったのかと後悔していた
彼女は服を着終えると、そのまま帰ってしまった
玄関のドアが閉まる直前に、カランと音がした
あとで確かめてみたら誕生日にあげた指輪が投げ捨てられていた