すみれは「私もこういうの作るんですー」って言ってブレスレットを見せてくれた
売り物かと思うくらい綺麗だった 冷静になるとパーツは全て例の手芸屋で売ってる物だったが
正直ブレスレットより腕、そして袖口に目が行っていたことは秘密だ
そこからはすみれが手芸関連で延々といろいろ話してくれた
俺は適当な相槌を打つことだけは定評があるので相槌を打ちに打った
会話内容はうろ覚えだ とにかく必死だった
かぎ針については さりげなくここで聞いたんだったと思う
気付けばまた結構な時間話していた
別れるのが嫌で帰り話を切り出せなかった
・・・とはいえど流石に会話のネタも尽きる
無言空間が起こった後すみれがスマホで時間を見て「時間平気ですか?」と聞いてきた
まさか3日くらい予定ないですとは言えず まだ平気ですけど そちらは〜なんて答えた
実はあまり予定が無くて・・・と返すすみれの顔は苦笑いだった
それならもっとお話をっていうかこの夏俺との予定でスケジュール埋めませんか!?と脳内で叫んだが
すみれは無情にも「でもここで失礼しますね」と言い残して帰って行くところだった
俺はどうにか「あの、メアド教えてもらえません?」と聞くことができた
スマホを持っていなかったので「てかLINEやってる?」じゃないのが情けない
すみれはいつもの笑って「メールでやりとりするよりここでまた偶々会う方が素敵じゃないですか?」と言った
俺はロマンチックなことを言うなぁと思いそうだね それじゃあまた会おうみたいなことを言って別れた
冷静に後で考えるとあの笑顔はいつもの苦笑いじゃなかったか?上手いこと避けられただけじゃないか・・・
ということで俺の手芸屋通い生活は続いた
夏休みだというのに暇な日があれば学校最寄りの駅に来て手芸屋に行った
その後夏休みが終わるまでに2回ほど会った
稀に来てくれるあたり嫌われてはいないらしく安心した
進路の話なんかをした
すみれは専門学校に行くらしかった 本気になったらのとこだ
何度会っても連絡先は教えてくれなかった
俺の進路を応援してますと言ってくれたが連絡先くれれば手芸屋に来る回数減って一番応援になるんだけど・・・とか思った
焦らされているようで俺はますます熱くなっていた
季節が変わり風は涼しくなっていた