浪人生の俺が図書館で声をかけた女の子のこと
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32 :タクロウ:2012/10/13(土) 15:55:36.48 ID:xb55BC3Y0
チサト:「うん。最近よく来るかな。そういう時期だし。」
なんか今ひとつ理解できなかったが、彼女がこれからも図書館に来る可能性があることに俺は狂喜した。
その日は家に帰ってからも何だか嬉しくて眠れなかった。
次の日、俺は期待して図書館に出かけたが彼女はいなかった。
勉強を15分おきぐらいに中断しては図書館中を徘徊して彼女を探した。
いない。
33 :タクロウ:2012/10/13(土) 15:57:23.54 ID:xb55BC3Y0
それから2週間ほど経ったある日の夕方いつもの用に徘徊していた俺は彼女を見つけた。
俺:「おお、また会ったね。」
チサト:「俺君、本当に図書館に毎日来てるんだね。」
俺:「他に行くとこないしな。」
チサト:「あたしも似たようなものかも・・・」
俺:「え?」
チサト:「ああ、にしないで」
その頃からだ。
何か彼女の影を感じ始めたのは。
会話の端々に現れる違和感。
35 :タクロウ:2012/10/13(土) 15:59:09.21 ID:xb55BC3Y0
最後のチサトの言葉は
「ああ、気にしないで」
でした。ごめんなさい。
36 :タクロウ:2012/10/13(土) 16:00:10.57 ID:xb55BC3Y0
それから僕らは図書課の近くの公園のベンチで話し込むのが日課になっていた。
季節は夏に向かっていた。
初夏のベンチで缶コーヒーを飲みながら僕らは日が暮れるまで話続けた。
その晩、ケータイの番号とメールアドレスを交換して別れた。
ケータイは浪人した時に買った。アドレス帳に登録してある名前を見ると友達がいるって実感できて安心した。
37 :タクロウ:2012/10/13(土) 16:01:45.40 ID:xb55BC3Y0
ケータイで連絡取り合うようになってから彼女と会うのは楽になった。
俺メール:「今日も図書館来る?」
チサトメール:「今日は18:00くらいに行くかな」
もう、夕方から夜まで公園のベンチで話すのは日課になっていた。
雨の日はコンビニの軒下や公共施設で話し込んだ。
38 :タクロウ:2012/10/13(土) 16:02:59.15 ID:xb55BC3Y0
しかし、彼女について俺はあまりにも知らないことが多いことに気がついた。
家族構成、住んでる所、昼間なにをして過ごしているのか自分のことは一切話そうとしなかった。
39 :タクロウ:2012/10/13(土) 16:04:16.71 ID:xb55BC3Y0
だんだん、話す時間が長くなって22時を過ぎても話し込んでた。
不審に思った俺の親から携帯に電話があって
母:「お夕飯冷めてるよ。図書館閉まったでしょ?何やってるの?」
俺:「ああ、ちょっと友達と会ってさ。久しぶりだから遅くなる。夕飯は温めて食べるよ。」
親は俺が他人と話したくてノイローゼ気味になってたの知ってたから友達と話してるって言ったら急に優しくなった。
で、その時ようやく気づいたのだ。
彼女の親は心配しないのかと・・・
40 :タクロウ:2012/10/13(土) 16:05:33.63 ID:xb55BC3Y0
俺:「あのさ、最近毎日話してるけど、家の人さん心配しないの?」
チサト:「さあ、どうなんだろ。(笑顔)」
俺:「まあ、引き止めてる俺が悪いんだけどさ。あんまり遅くならない方がいいね。俺、送って行くよ。」
チサト:「ああ・・・気にしないで。大丈夫。ホント。」
俺:「でも・・・家、遠いの?」
チサト:「いいから、いいから。本っ当に大丈夫だから。俺君も早く帰らないとお母さん心配するよ。」
41 :タクロウ:2012/10/13(土) 16:07:05.07 ID:xb55BC3Y0
その日俺は一人でとぼとぼ帰った。
彼女の家には何か問題がある。
鈍感な俺でも薄々気づいてきた。
42 :名も無き被検体774号+:2012/10/13(土) 16:07:54.69 ID:LtRrKX+40
ふむ
43 :タクロウ:2012/10/13(土) 16:08:55.15 ID:xb55BC3Y0
8月。
世間はお盆休み真っ盛りだったが、無職自宅浪人の俺は そもそも毎日夏休みなので実感が湧いてなかった。
チサトと話していたある夕方だった。
高校のクラスの問題児だったヤツの話に盛り上がっている時に気が大きくなっていた俺は
「普通の家は両親が揃ってるもんじゃん。あいつは片親だからさ。」
と、普段だったら決して口にしないような発言をした。
44 :タクロウ:2012/10/13(土) 16:09:34.22 ID:xb55BC3Y0
言葉にした途端。その言葉が凍りついて目の前に落ちてきたような気がした。
俺とチサトの間が一瞬凍りついたのだ。
チサトは笑顔で「ああ、そうだね〜」とか言っていた。
でも、目が悲しそうで、寂しそうだった。
45 :タクロウ:2012/10/13(土) 16:10:39.93 ID:xb55BC3Y0
俺はとっさに謝った。
「あ、ごめん・・・その・・・俺の家庭がスタンダードみたいな言い方は良くないよね。」
チサトは一瞬息を吸い込んで
「俺君は謝らなくていいと思う。幸せな人は幸せのままでいいと思う。」
俺:「・・・」
チサト:「・・・」
その時だった。
46 :タクロウ:2012/10/13(土) 16:12:28.49 ID:xb55BC3Y0
俺はチサトの手首に切り傷を見つけた。
一瞬だったが、彼女は俺の視線を見逃さなかった。
ぱっと彼女が動くのと、俺が彼女の腕を掴むのが同時だった。
俺:「この傷は・・・」
チサト:「俺君は・・・知らない方が良い。」
俺:「でも・・・」
チサト:「世の中にはね、俺君みたいな幸せな人は知らないことがいっぱいあるの。とにかく私は大丈夫だから。」
彼女はその日は足早に帰っていった。
52 :名も無き被検体774号+:2012/10/13(土) 16:19:07.19 ID:fBsXQv4O0
うむ、おもしろそうだ
帰ってきたら読むからなるべく進めておいてね
53 :7:2012/10/13(土) 16:19:15.95 ID:Jf1Z8OKj0
>>1おつ
のんびり行こうぜ
55 :タクロウ:2012/10/13(土) 16:32:59.07 ID:xb55BC3Y0
戻ってきた。
コーヒーとドーナツでまったりしながら続ける。
黙々と独り語りしてたのかと思ったら案外見ていてくれた人がいて驚いた。
56 :タクロウ:2012/10/13(土) 16:36:45.18 ID:xb55BC3Y0
>>48
だよね。口が滑るとはまさにこのこと。
>>50
「大変なことになった」とか書くほどのことかな?
って感じだったのでこんなスレタイに
57 :タクロウ:2012/10/13(土) 16:37:23.26 ID:xb55BC3Y0
<続き>
俺は この頃からほとんど勉強していない。
簡単に言えばチサトを救うっていう大義名分を作って受験から逃げたんた。
夏の終わり頃になると、たまたま出会う予備校組の友達と模試の結果の話なんかになる。
友人:「模試の結果どうよ?ようやく旧帝大あたりがB判定だよ。浪人始めた時は もっと成績上がると思ってたよな。」
俺:「ああ・・・俺さ。なんかマーク欄間違えて、女子大とか受験科目違う学部選んじゃったりして・・判定不能だったよ。」
友人:「お前、なにやってんだよ。それセンターでやったら終わりだぜww」
俺:「あはは。そうだよなww」
なんか、浪人している友人たちにも置いていかれた気がした。
62 :タクロウ:2012/10/13(土) 16:41:54.91 ID:xb55BC3Y0
俺は図書館にこもっていたが、ほとんど心理学とか精神医学の本を読み漁っていた。
親が自殺した子供の家庭環境とか、リストカットする子供の心理とかメンタルヘルスなんて言葉は当時知らなかったが、完全にその分野の虜になっていた。
夕方のチサトとの会話は秋になっても ずっと続いていた。
俺はよくカマをかけるようになった。
そこから彼女の心理を読み取ろうと必死だった。
64 :タクロウ:2012/10/13(土) 16:44:25.22 ID:xb55BC3Y0
俺:「よく図書館で本借りていくけど、どんなの読むの?」
チサト:「うーん、小説は村上春樹とかが多いかな。」
俺:「結構借りてるじゃん、それだけじゃないでしょ?」
チサト:「まあ、イロイロね。」
俺:「見せてよ。俺も結構守備範囲広いから読んでみたいし」
チサト:「趣味じゃないと思うけどな・・・」
バッグから出てきた本は
『十五歳の遺書』
『分裂症の少女の手記』
などなど・・・ヘビーなものばかり。
65 :タクロウ:2012/10/13(土) 16:46:40.46 ID:xb55BC3Y0
多重人格に関する本を一冊だけ貸してくれた。
まあ、図書館の本の又貸しはマズイんだが・・・
彼女は俺の目を見て悲しそうに言った。
「俺君は優しいから、こういうの読まない方がいいよ。どんどん深みにはまっちゃう。」
秋の風がチサトの長い髪を揺らした。
髪を掻き上げた瞳は涼しげで電灯に照らされた彼女は本当に綺麗だった。
本を受け取った時、僕は恋に落ちた。
66 :タクロウ:2012/10/13(土) 16:48:05.05 ID:xb55BC3Y0
季節は木枯らしが吹く冬に向かっていた。
あいも変わらず、僕は図書館でグダグダして、彼女は昼間謎の活動をしては夕方になると図書館に来ていた。
変わったことといえば、僕が恋したことぐらいだろう。
僕は彼女のことが知りたくて、イロイロ聞き出そうとするけど、チサトは自分のことは いつもはぐらかして終わる。
それ以上追求したら、どこか遠くに行ってしまいそうで、俺は口をつぐむ。
チサト:「うん。最近よく来るかな。そういう時期だし。」
なんか今ひとつ理解できなかったが、彼女がこれからも図書館に来る可能性があることに俺は狂喜した。
その日は家に帰ってからも何だか嬉しくて眠れなかった。
次の日、俺は期待して図書館に出かけたが彼女はいなかった。
勉強を15分おきぐらいに中断しては図書館中を徘徊して彼女を探した。
いない。
33 :タクロウ:2012/10/13(土) 15:57:23.54 ID:xb55BC3Y0
それから2週間ほど経ったある日の夕方いつもの用に徘徊していた俺は彼女を見つけた。
俺:「おお、また会ったね。」
チサト:「俺君、本当に図書館に毎日来てるんだね。」
俺:「他に行くとこないしな。」
チサト:「あたしも似たようなものかも・・・」
俺:「え?」
チサト:「ああ、にしないで」
その頃からだ。
何か彼女の影を感じ始めたのは。
会話の端々に現れる違和感。
35 :タクロウ:2012/10/13(土) 15:59:09.21 ID:xb55BC3Y0
最後のチサトの言葉は
「ああ、気にしないで」
でした。ごめんなさい。
36 :タクロウ:2012/10/13(土) 16:00:10.57 ID:xb55BC3Y0
それから僕らは図書課の近くの公園のベンチで話し込むのが日課になっていた。
季節は夏に向かっていた。
初夏のベンチで缶コーヒーを飲みながら僕らは日が暮れるまで話続けた。
その晩、ケータイの番号とメールアドレスを交換して別れた。
ケータイは浪人した時に買った。アドレス帳に登録してある名前を見ると友達がいるって実感できて安心した。
37 :タクロウ:2012/10/13(土) 16:01:45.40 ID:xb55BC3Y0
ケータイで連絡取り合うようになってから彼女と会うのは楽になった。
俺メール:「今日も図書館来る?」
チサトメール:「今日は18:00くらいに行くかな」
もう、夕方から夜まで公園のベンチで話すのは日課になっていた。
雨の日はコンビニの軒下や公共施設で話し込んだ。
38 :タクロウ:2012/10/13(土) 16:02:59.15 ID:xb55BC3Y0
しかし、彼女について俺はあまりにも知らないことが多いことに気がついた。
家族構成、住んでる所、昼間なにをして過ごしているのか自分のことは一切話そうとしなかった。
39 :タクロウ:2012/10/13(土) 16:04:16.71 ID:xb55BC3Y0
だんだん、話す時間が長くなって22時を過ぎても話し込んでた。
不審に思った俺の親から携帯に電話があって
母:「お夕飯冷めてるよ。図書館閉まったでしょ?何やってるの?」
俺:「ああ、ちょっと友達と会ってさ。久しぶりだから遅くなる。夕飯は温めて食べるよ。」
親は俺が他人と話したくてノイローゼ気味になってたの知ってたから友達と話してるって言ったら急に優しくなった。
で、その時ようやく気づいたのだ。
彼女の親は心配しないのかと・・・
40 :タクロウ:2012/10/13(土) 16:05:33.63 ID:xb55BC3Y0
俺:「あのさ、最近毎日話してるけど、家の人さん心配しないの?」
チサト:「さあ、どうなんだろ。(笑顔)」
俺:「まあ、引き止めてる俺が悪いんだけどさ。あんまり遅くならない方がいいね。俺、送って行くよ。」
チサト:「ああ・・・気にしないで。大丈夫。ホント。」
俺:「でも・・・家、遠いの?」
チサト:「いいから、いいから。本っ当に大丈夫だから。俺君も早く帰らないとお母さん心配するよ。」
41 :タクロウ:2012/10/13(土) 16:07:05.07 ID:xb55BC3Y0
その日俺は一人でとぼとぼ帰った。
彼女の家には何か問題がある。
鈍感な俺でも薄々気づいてきた。
42 :名も無き被検体774号+:2012/10/13(土) 16:07:54.69 ID:LtRrKX+40
ふむ
43 :タクロウ:2012/10/13(土) 16:08:55.15 ID:xb55BC3Y0
8月。
世間はお盆休み真っ盛りだったが、無職自宅浪人の俺は そもそも毎日夏休みなので実感が湧いてなかった。
チサトと話していたある夕方だった。
高校のクラスの問題児だったヤツの話に盛り上がっている時に気が大きくなっていた俺は
「普通の家は両親が揃ってるもんじゃん。あいつは片親だからさ。」
と、普段だったら決して口にしないような発言をした。
44 :タクロウ:2012/10/13(土) 16:09:34.22 ID:xb55BC3Y0
言葉にした途端。その言葉が凍りついて目の前に落ちてきたような気がした。
俺とチサトの間が一瞬凍りついたのだ。
チサトは笑顔で「ああ、そうだね〜」とか言っていた。
でも、目が悲しそうで、寂しそうだった。
45 :タクロウ:2012/10/13(土) 16:10:39.93 ID:xb55BC3Y0
俺はとっさに謝った。
「あ、ごめん・・・その・・・俺の家庭がスタンダードみたいな言い方は良くないよね。」
チサトは一瞬息を吸い込んで
「俺君は謝らなくていいと思う。幸せな人は幸せのままでいいと思う。」
俺:「・・・」
チサト:「・・・」
その時だった。
46 :タクロウ:2012/10/13(土) 16:12:28.49 ID:xb55BC3Y0
俺はチサトの手首に切り傷を見つけた。
一瞬だったが、彼女は俺の視線を見逃さなかった。
ぱっと彼女が動くのと、俺が彼女の腕を掴むのが同時だった。
俺:「この傷は・・・」
チサト:「俺君は・・・知らない方が良い。」
俺:「でも・・・」
チサト:「世の中にはね、俺君みたいな幸せな人は知らないことがいっぱいあるの。とにかく私は大丈夫だから。」
彼女はその日は足早に帰っていった。
52 :名も無き被検体774号+:2012/10/13(土) 16:19:07.19 ID:fBsXQv4O0
うむ、おもしろそうだ
帰ってきたら読むからなるべく進めておいてね
53 :7:2012/10/13(土) 16:19:15.95 ID:Jf1Z8OKj0
>>1おつ
のんびり行こうぜ
55 :タクロウ:2012/10/13(土) 16:32:59.07 ID:xb55BC3Y0
戻ってきた。
コーヒーとドーナツでまったりしながら続ける。
黙々と独り語りしてたのかと思ったら案外見ていてくれた人がいて驚いた。
56 :タクロウ:2012/10/13(土) 16:36:45.18 ID:xb55BC3Y0
>>48
だよね。口が滑るとはまさにこのこと。
>>50
「大変なことになった」とか書くほどのことかな?
って感じだったのでこんなスレタイに
57 :タクロウ:2012/10/13(土) 16:37:23.26 ID:xb55BC3Y0
<続き>
俺は この頃からほとんど勉強していない。
簡単に言えばチサトを救うっていう大義名分を作って受験から逃げたんた。
夏の終わり頃になると、たまたま出会う予備校組の友達と模試の結果の話なんかになる。
友人:「模試の結果どうよ?ようやく旧帝大あたりがB判定だよ。浪人始めた時は もっと成績上がると思ってたよな。」
俺:「ああ・・・俺さ。なんかマーク欄間違えて、女子大とか受験科目違う学部選んじゃったりして・・判定不能だったよ。」
友人:「お前、なにやってんだよ。それセンターでやったら終わりだぜww」
俺:「あはは。そうだよなww」
なんか、浪人している友人たちにも置いていかれた気がした。
62 :タクロウ:2012/10/13(土) 16:41:54.91 ID:xb55BC3Y0
俺は図書館にこもっていたが、ほとんど心理学とか精神医学の本を読み漁っていた。
親が自殺した子供の家庭環境とか、リストカットする子供の心理とかメンタルヘルスなんて言葉は当時知らなかったが、完全にその分野の虜になっていた。
夕方のチサトとの会話は秋になっても ずっと続いていた。
俺はよくカマをかけるようになった。
そこから彼女の心理を読み取ろうと必死だった。
64 :タクロウ:2012/10/13(土) 16:44:25.22 ID:xb55BC3Y0
俺:「よく図書館で本借りていくけど、どんなの読むの?」
チサト:「うーん、小説は村上春樹とかが多いかな。」
俺:「結構借りてるじゃん、それだけじゃないでしょ?」
チサト:「まあ、イロイロね。」
俺:「見せてよ。俺も結構守備範囲広いから読んでみたいし」
チサト:「趣味じゃないと思うけどな・・・」
バッグから出てきた本は
『十五歳の遺書』
『分裂症の少女の手記』
などなど・・・ヘビーなものばかり。
65 :タクロウ:2012/10/13(土) 16:46:40.46 ID:xb55BC3Y0
多重人格に関する本を一冊だけ貸してくれた。
まあ、図書館の本の又貸しはマズイんだが・・・
彼女は俺の目を見て悲しそうに言った。
「俺君は優しいから、こういうの読まない方がいいよ。どんどん深みにはまっちゃう。」
秋の風がチサトの長い髪を揺らした。
髪を掻き上げた瞳は涼しげで電灯に照らされた彼女は本当に綺麗だった。
本を受け取った時、僕は恋に落ちた。
66 :タクロウ:2012/10/13(土) 16:48:05.05 ID:xb55BC3Y0
季節は木枯らしが吹く冬に向かっていた。
あいも変わらず、僕は図書館でグダグダして、彼女は昼間謎の活動をしては夕方になると図書館に来ていた。
変わったことといえば、僕が恋したことぐらいだろう。
僕は彼女のことが知りたくて、イロイロ聞き出そうとするけど、チサトは自分のことは いつもはぐらかして終わる。
それ以上追求したら、どこか遠くに行ってしまいそうで、俺は口をつぐむ。
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