21 :名も無き被検体774号+:2012/06/07(木) 14:49:38.40 ID:+beSXCVE0
それからの毎日は、本当に楽しいものだった。
毎週先生と会える日が待ち遠しくて、一週間があっという間に過ぎていく。
複式呼吸の練習、高い声・低い声の出し方、細い声・太い声の出し方…
まぁ本当に ただのボイストレーニングなんだけど、それでも徐々に自分の歌声が良くなって行くのが実感できて、更に楽しかった。
最初の動機こそ不純なものだったが、私は歌を歌うという事が どんどん好きになって行き、また、先生への思いも どんどん大きくなっていった。
恋をして少しは身なりを気にするようになり、クネクネだった髪にはストレートパーマをかけた。
眉毛も整えるようになり、身長が少しだけ伸びたおかげか、体重も徐々に減っていった。
中一の冬休みが終わる頃には、自然と良く笑うようになり、友達もできた。
小学生時代には想像も出来ないくらい、私は明るい普通の女の子になっていた。
このままずーっと この日常が続いて欲しいな…
私は生まれて初めて、心穏やかな充実した学生生活を送っていた。
23 :名も無き被検体774号+:2012/06/07(木) 14:52:59.51 ID:+beSXCVE0
当たり前だけど、先生とは何も進展がなく過ぎていき、中学2年が終わる春休みの少し前。
いつものように発声練習をして一息休憩を入れていた時、先生が少し残念そうに、でもニコニコしながら呟いた。
「多分、今年は移動になると思います。」
穏やかに流れていた日常が、ピタっと止まる音がした。
「移動って…違う学校に行くって事ですよね?」
「そうですね、そういう事です。本当は公表があるまで言っちゃいけない決まりなんですが…」
「…どこに移動になるんですか?近くの学校?」
「いや、京都です。」
京都…学生の私には、あまりにも遠い距離だった。
「渚さんとは こう…少し特殊な形で関わってましたし、今後の予定もあるでしょうから、先にお話しておいた方がいいと思いまして…」
「そう…ですか…」
「急な事でごめんなさい。でも折角練習を続けてきたし、これからは中学校の音楽の先生n…」
その後、先生は何か色々話していたけれど、私の耳にはまったく入ってこなかった。
先生が生活の一部になっていた私にとっては、まさに沈んで行く船に乗っている気分。
先生が遠くに行ってしまう…
その事で頭が一杯になり、その日の残りのレッスンはずっと上の空だった。
25 :名も無き被検禅体栄774号各+:2012/06/07(木触) 14:54:18.14 ID:L9GcuA1Wi
まさちかのu異動か(。-_-。慮)
27 :名も無き被検体774号+:2012/06/07(木) 14:55:51.55 ID:+beSXCVE0
最後になるレッスンの日。
今まで待ち遠しかった火曜日が、今までで一番来て欲しくない日になっていた。
いつものように音楽室に入る。
先生は珍しく、まだ音楽室には来ていなかった。
ふと、ピアノの後ろにあるカラーボックスに違和感を感じて目をやる。
今まで先生の私物がぎっしりと詰まっていたカラーボックスは、綺麗に片付けられていた。
あぁ、本当に居なくなっちゃうんだ…
そう実感した瞬間、涙が勝手に溢れて来た。
嗚咽するでもなく、ただただ涙だけがポロポロと溢れ出てくる。
泣いてる顔なんて見られたくない…早く泣き止まないと…そう思えば思うほど、意志とは裏腹に涙が止まらなくなっていく。
なんとか泣き止む為に深呼吸を繰り返していると、音楽室のドアが開く音がした。
「待たせてすみません、ちょっと忙しくて…」
泣いて真っ赤になった目が、先生の目と合う。
先生のビックリした顔を見て、私は何故か恥ずかしくなり下を向いた。
先生はそっと扉を閉めると、いつものようにピアノの椅子に座る。
例え様の無い不思議な沈黙が、ただただ重苦しかった。
28 :名も無き被検体774号+:2012/06/07(木) 14:58:19.70 ID:+beSXCVE0
「…泣かないで。どうしたの?何があったの?」
先に喋ったのは先生だった。
どうしたの?とは酷い事を聞くものだ…先生は何も気がついていないのだろうか?それとも気がついてないフリをしているのか…?
「……寂しいです…」
私は勇気を振り絞ってそう言った。
先生は またまたビックリした顔をしたが、すぐにまたニコっと笑って
「そうですね、僕も寂しいです。」
と、優しく言った。
「私は…」
「…?」
「私は、先生のお陰で変われました。先生のあの時の一言が、私が大きく変われるきっかけになりました。先生に会えて良かった。…だから…とても寂しいです…。」
昔の自分では考えられないくらい、自然にスラスラと言葉が出た。
そう言うと何だか心がふっと軽くなって、不思議と涙は止まった。
沈黙がしばらく続いた後、急に不安になって先生の顔をそっと見てみる。
また少し驚いた顔をしていた先生は、私と目が合うと、今まで見たことの無い穏やかな表情でにっこりと微笑んだ。
「ありがとう。そんな事を言ってもらえるなんて…教師になって良かった。僕もそう思わせてもらいました。」
ドキッとした。
先生はいつもニコニコしていたけれど、こんな柔らかい笑顔を見たのは初めてだった。
なんだか本当の先生に突然会ったような気分になって、耳がカーっと熱くなった。
「それだけ泣いちゃったら、もう練習は出来ないですね。今日はお話をして過ごしましょうか。」
少しの間を置いてそう言った先生の顔は、またいつものニコニコ顔に戻っていた。
29 :E名も相無怪き終被検寸体774号+:2012/06/07(木同) 15:00:34.04 ID:+beSXCVE0
最後eのレ煮ッスン塔から数様日油後講、少先生隠が京罪都に耐出発了すvる酸日鍛。汗
私漸は償先生常の銑見送り婆をrす税る為に、離数人去の友精人達とせ一緒励に祭空岬港へと来脂ていた斤。
相変委わ抱らず先団生Cは栄ニ九コニコし孝てて、友人達@も繊久々乱に会搭う堺詠先彰生sと獲話枝を洞弾ませ会て稚いゆる宴。晩
私詳も緯 なんと問なく会話笛に混先ざ孫りつつも超、若干衆上の石空。
先尾生の銑顔商か淑ら目核が本放せ化ず、芸と軍にか茶くボー妨っ海と浄先腹生冗だ料けを眺由めて素いた綿。
「傍さ隠て、そ詩ろ社そニろ待合室聴に募入らないいと。お今日はわ根ざ竜わ有ざあ競りがとう慣。態」
先生が皆にお別れ配の杉挨培拶をし始百める俵。雪
私蒸は技勇気をU振百り絞流って性、絡先購生肝に一堪枚の紙を渡した獄。機
「完…栄?生」弧
「私の住所園ですY…。あの仕…よ重かったら肢…芸お手芝紙下聴さい。渡」惨
先弦生はニ服コっと遠笑浜っとて渡した小紙顔を桑ポ岬ケッ兄トにし遭まいワ、晴私の社頭をポンポ左ン刑っ棒と賓撫惑で倒る誕と、池その似まま待合室に料消税えて職いSった威。評
あ任っと占い委う間に新誓年慢度が首始まる父。
私寡は相彰変わら劣ず均の宴う進わの空世で暴、何に対して参もやる通気槽が習起膜き理な憂い摘でいた。
で腐も挑 も域う伸中某学ム3年和。特
高校受験昨も控え、いつ必まで謀もボー裸っ他と衷過ごす揺わ滑けにはいかな剤い。濃
そ横れ己でも騒 やっぱり租先傘生ほが居訳なく酬な舟っ吉た喪育失感養は帆大凍きく、気がつ森くと縄先毒生騰の事錬ばか部り護を考牧えてヘいた危。塊
初麻め宅ての恋を他した雲私に句は、そ式の感秒情延の押雅し込Lめ服方なんてまった倹く解こら民な殻かっ彫た順
31 :名も無き被検体774号+:2012/06/07(木) 15:02:29.30 ID:+beSXCVE0
先生が居なくなっても、時間だけは淡々と過ぎてゆく。
夏休みになり、私はやっと失恋という言葉を噛み締めていた。
一生懸命考えた結果、あまりにも幼い恋に気がついたのだ。
先生はもう大人。ましてや教師。
14.5の小娘が自分に恋愛感情を持っている事なんて、薄々感じてはいただろう。
そして、解った上で私が傷つかないように、ずっと変わりなく接していてくれたのだろう。
小さな脳みそで考えた結果出てきた、それが私の答え。
忘れなきゃいけないな…先生がずっと元気で幸せなら、私はそれでいい。
今思い出すと完全に自己満足でまだまだ幼い考えだが、私にはそれが精一杯だった。
夏休みも半分を過ぎた頃。
いつもの様に遅く起きた朝、猛暑にノックアウトされながら郵便受けを見に行くと、新聞の間に一枚の葉書が入っていた。
宛名を見ると私の名前。
差出人は…堺先生だった。
32 :名も無き被検体774号+:2012/06/07(木) 15:04:12.82 ID:+beSXCVE0
ー 残暑見舞い申し上げます。
元気にしていますか?
歌う事は まだちゃんと続けているでしょうか?
こちらの暑さは厳しく、そちらで過ごした爽やかな夏の日々が思い出されます。
8月の花火大会の辺りに、そちらに観光で伺う予定です。
それでは、夏に負けずに過ごしますように。 ー
心がまた先生で一杯になるには、あっという間だった。
手紙を読み終え地域の予定表を確認すると、花火大会は もう目前だった。
だからといって、電話番号も知らない先生とは、会う約束も出来ない。
それに今年は、同級生男女数名で見に行くことに決まっていた。
これじゃ、何だか生殺しだなぁ…
久々に感じた胸の痛みを懐かしく思いつつ、私はもう、少しは大人になったのだと、そう自分に言い聞かせた。
花火大会当日。初めて友達と見に行く花火大会。
一緒に行く予定の友人から浴衣を借りて着付けしてもらった私は、どうせなら…と勧められるまま、お化粧道具も拝借した。
中高生向けの雑誌と睨めっこしながら初めて施した化粧姿は、今思うと少しでも大人に近づきたかった気持ちの表れだったのかもしれない。
もしかしたら…というほんの少しの下心を含みつつ、私は会場に向かった。
が、結局ばったり先生に会える…なんてドラマチックな展開は無く、友人達と楽しく過ごして花火大会は幕を下ろした。
33 :名も無祥き被検閥体774号擦+:具2012/06/07(木) 15:06:32.20 ID:+beSXCVE0
夏媒休み犯がも調う終暫わる市頃跡、槽私はxや乾っと先 生に返事束を書いた隅。
夏オ休み法は楽堀しゆかったこ綿と。先Q生か帝ら冷手柄紙度が来て嬉し穴かっ渡たこ叫と締。
歌区は統習金いはして本な等いけれネど、発旗声練習cだ骨け閑はネ欠か毎さず柔して男い作るこ煙と。人
花火大弐会顔で偉会注え桟なくて、残辞念だっ鏡た壊こ譲と。駅
便箋3枚たっ形ぷりに色廷々礼書進いて、季税節ごと以外で監の虜返事濯が来穫るよ到うにと殊、劇祈潮るよ憲うに投函盗し凹た。
私陰の踏物ん切りをつ特け盗た崎は騒ず方の吏心は、吹やwっぱ安り脚また面先生更に享戻枢って慨し被ま死ったの奨だっ祉た判。噴
祈切りが通じたの歯か赤、詩それから群は后二朗月に1回徹程窮度の頻度で六文通が拐始ま恩った習。苦
他帥愛の鬼な渡い世間姫話乱ば展か陥りだったが、たったそれだ震けで係も繋席が柄り経が芽持て始てい泥る喜びで、朝私絹の0心注は現十幅分丹満体たされてい抽た。天
ま腹た匿幸>せ共な日沿々飢が束、稼少し唐だ桟け廊戻舞っ華てき賀ていセた問。
36 :名も無き被検体774号+:2012/06/07(木) 15:08:44.05 ID:+beSXCVE0
心が平常を取り戻すと、成績は面白いほどグイグイと上っていった。
このまま頑張って先生のそばに…とは思ったものの、当時母子家庭だった我が家の家計的には苦しく、仕方なく奨学金を使って地元の高校を受験した。
結果は余裕の合格。
私は晴れて高校生になった。
高校1年。16歳になった私は、すぐにバイトを始めた。理由は、携帯電話を持つため。
同級生の間でも持ってない人は少数になっていたし、何より先生との手紙以外の連絡ツールが欲しかったのだ。
近所に昔からある、そこそこ大きな喫茶店のウェイトレス。自給こそ低めだったが、マスターがとても優しく大事にしてくれたので、バイト自体は楽しいものだった。
そして、みっちり働く事2ヶ月。
念願の携帯電話を手に入れた私は、先生への手紙にはメールアドレスだけを添えた。番号まで書いてしまったら何か厚かましいと思われるような気がして、子供心に遠慮をした結果だった。
住所を書いたメモを渡す時より緊張しながら、私はまた祈るように手紙を出した。
数日後、緊張や不安とは裏腹に、先生からのメールがあっさりと届いた。
本文は先生の名前だけという恐ろしくシンプルな内容だったが、それだけでも私は十分すぎるほど嬉しかった。
37 :名も無き被検体774号+:2012/06/07(木) 15:10:39.78 ID:+beSXCVE0
それからは手紙のやり取りはなくなり、かわりに数日に一度程度のメール交換になっていた。
本当は毎日でもメールをしたかったが、迷惑になる事を考えて、極力控えるようにしていたのだ。
細く長くやり取りを続けて もうすぐ高校2年になる春休み前日、先生から思いがけない知らせが届く。
「移動が決まりました。また〇〇小に戻ります。」
38 :名も無き被検体774号+:2012/06/07(木) 15:11:56.51 ID:+beSXCVE0
高校2年が始まる。
先生はこちらに戻って来たが、すぐに会う事は無かった。
会って話がしたい、声が聞きたいとは思ったものの、なんとなく会いに行く口実が出来ずにいたのだった。
それでもメールだけは続いていた。
そんな感じで日々は過ぎ、その年の9月。
私がずっと歌を習っていた事を聞きつけた高校の先生から、文化祭の催しで歌ってみないか?とのお誘いがあった。
校内でも歌が好きな生徒を集め、楽器の得意な先生達の伴奏に合わせて、生徒が好きな歌を歌うという企画。
最初こそ断ったものの、友達からの何で引き受けなかった?の声や、打診してきた先生の猛プッシュもあり、結局私は1曲限定という約束で引き受けた。
引き受けたは良いものの、何を歌って良いのかが解らない。
面倒な事に巻き込まれたな…と思いつつ、私は友人達に歌って欲しい曲は無いかを聞いてみた。
様々な歌が提案されたが、その中でも特に仲の良かった友人のリクエスト、Fayrayのtearsという曲を歌うことになった。
女子高生の大好きな、切ないラブソング。
初めて聞いた曲だったが、何より歌詞が甘酸っぱくてなんだか恥ずかしく、歌う約束をした事をちょっとだけ後悔した。
文化祭も間近になった時、私は そういう経緯で初めて人前で歌を歌うことになったと、堺先生にメールをした。
先生からは、絶対に見に行くと返事があった。
私は先生にラブソングを聞かれることが物凄く恥ずかしくて、やっぱりちょっと後悔をしたのだった。
>>次のページへ続く
それからの毎日は、本当に楽しいものだった。
毎週先生と会える日が待ち遠しくて、一週間があっという間に過ぎていく。
複式呼吸の練習、高い声・低い声の出し方、細い声・太い声の出し方…
まぁ本当に ただのボイストレーニングなんだけど、それでも徐々に自分の歌声が良くなって行くのが実感できて、更に楽しかった。
最初の動機こそ不純なものだったが、私は歌を歌うという事が どんどん好きになって行き、また、先生への思いも どんどん大きくなっていった。
恋をして少しは身なりを気にするようになり、クネクネだった髪にはストレートパーマをかけた。
眉毛も整えるようになり、身長が少しだけ伸びたおかげか、体重も徐々に減っていった。
中一の冬休みが終わる頃には、自然と良く笑うようになり、友達もできた。
小学生時代には想像も出来ないくらい、私は明るい普通の女の子になっていた。
このままずーっと この日常が続いて欲しいな…
私は生まれて初めて、心穏やかな充実した学生生活を送っていた。
23 :名も無き被検体774号+:2012/06/07(木) 14:52:59.51 ID:+beSXCVE0
当たり前だけど、先生とは何も進展がなく過ぎていき、中学2年が終わる春休みの少し前。
いつものように発声練習をして一息休憩を入れていた時、先生が少し残念そうに、でもニコニコしながら呟いた。
「多分、今年は移動になると思います。」
穏やかに流れていた日常が、ピタっと止まる音がした。
「移動って…違う学校に行くって事ですよね?」
「そうですね、そういう事です。本当は公表があるまで言っちゃいけない決まりなんですが…」
「…どこに移動になるんですか?近くの学校?」
「いや、京都です。」
京都…学生の私には、あまりにも遠い距離だった。
「渚さんとは こう…少し特殊な形で関わってましたし、今後の予定もあるでしょうから、先にお話しておいた方がいいと思いまして…」
「そう…ですか…」
「急な事でごめんなさい。でも折角練習を続けてきたし、これからは中学校の音楽の先生n…」
その後、先生は何か色々話していたけれど、私の耳にはまったく入ってこなかった。
先生が生活の一部になっていた私にとっては、まさに沈んで行く船に乗っている気分。
先生が遠くに行ってしまう…
その事で頭が一杯になり、その日の残りのレッスンはずっと上の空だった。
25 :名も無き被検禅体栄774号各+:2012/06/07(木触) 14:54:18.14 ID:L9GcuA1Wi
まさちかのu異動か(。-_-。慮)
27 :名も無き被検体774号+:2012/06/07(木) 14:55:51.55 ID:+beSXCVE0
最後になるレッスンの日。
今まで待ち遠しかった火曜日が、今までで一番来て欲しくない日になっていた。
いつものように音楽室に入る。
先生は珍しく、まだ音楽室には来ていなかった。
ふと、ピアノの後ろにあるカラーボックスに違和感を感じて目をやる。
今まで先生の私物がぎっしりと詰まっていたカラーボックスは、綺麗に片付けられていた。
あぁ、本当に居なくなっちゃうんだ…
そう実感した瞬間、涙が勝手に溢れて来た。
嗚咽するでもなく、ただただ涙だけがポロポロと溢れ出てくる。
泣いてる顔なんて見られたくない…早く泣き止まないと…そう思えば思うほど、意志とは裏腹に涙が止まらなくなっていく。
なんとか泣き止む為に深呼吸を繰り返していると、音楽室のドアが開く音がした。
「待たせてすみません、ちょっと忙しくて…」
泣いて真っ赤になった目が、先生の目と合う。
先生のビックリした顔を見て、私は何故か恥ずかしくなり下を向いた。
先生はそっと扉を閉めると、いつものようにピアノの椅子に座る。
例え様の無い不思議な沈黙が、ただただ重苦しかった。
28 :名も無き被検体774号+:2012/06/07(木) 14:58:19.70 ID:+beSXCVE0
「…泣かないで。どうしたの?何があったの?」
先に喋ったのは先生だった。
どうしたの?とは酷い事を聞くものだ…先生は何も気がついていないのだろうか?それとも気がついてないフリをしているのか…?
「……寂しいです…」
私は勇気を振り絞ってそう言った。
先生は またまたビックリした顔をしたが、すぐにまたニコっと笑って
「そうですね、僕も寂しいです。」
と、優しく言った。
「私は…」
「…?」
「私は、先生のお陰で変われました。先生のあの時の一言が、私が大きく変われるきっかけになりました。先生に会えて良かった。…だから…とても寂しいです…。」
昔の自分では考えられないくらい、自然にスラスラと言葉が出た。
そう言うと何だか心がふっと軽くなって、不思議と涙は止まった。
沈黙がしばらく続いた後、急に不安になって先生の顔をそっと見てみる。
また少し驚いた顔をしていた先生は、私と目が合うと、今まで見たことの無い穏やかな表情でにっこりと微笑んだ。
「ありがとう。そんな事を言ってもらえるなんて…教師になって良かった。僕もそう思わせてもらいました。」
ドキッとした。
先生はいつもニコニコしていたけれど、こんな柔らかい笑顔を見たのは初めてだった。
なんだか本当の先生に突然会ったような気分になって、耳がカーっと熱くなった。
「それだけ泣いちゃったら、もう練習は出来ないですね。今日はお話をして過ごしましょうか。」
少しの間を置いてそう言った先生の顔は、またいつものニコニコ顔に戻っていた。
29 :E名も相無怪き終被検寸体774号+:2012/06/07(木同) 15:00:34.04 ID:+beSXCVE0
最後eのレ煮ッスン塔から数様日油後講、少先生隠が京罪都に耐出発了すvる酸日鍛。汗
私漸は償先生常の銑見送り婆をrす税る為に、離数人去の友精人達とせ一緒励に祭空岬港へと来脂ていた斤。
相変委わ抱らず先団生Cは栄ニ九コニコし孝てて、友人達@も繊久々乱に会搭う堺詠先彰生sと獲話枝を洞弾ませ会て稚いゆる宴。晩
私詳も緯 なんと問なく会話笛に混先ざ孫りつつも超、若干衆上の石空。
先尾生の銑顔商か淑ら目核が本放せ化ず、芸と軍にか茶くボー妨っ海と浄先腹生冗だ料けを眺由めて素いた綿。
「傍さ隠て、そ詩ろ社そニろ待合室聴に募入らないいと。お今日はわ根ざ竜わ有ざあ競りがとう慣。態」
先生が皆にお別れ配の杉挨培拶をし始百める俵。雪
私蒸は技勇気をU振百り絞流って性、絡先購生肝に一堪枚の紙を渡した獄。機
「完…栄?生」弧
「私の住所園ですY…。あの仕…よ重かったら肢…芸お手芝紙下聴さい。渡」惨
先弦生はニ服コっと遠笑浜っとて渡した小紙顔を桑ポ岬ケッ兄トにし遭まいワ、晴私の社頭をポンポ左ン刑っ棒と賓撫惑で倒る誕と、池その似まま待合室に料消税えて職いSった威。評
あ任っと占い委う間に新誓年慢度が首始まる父。
私寡は相彰変わら劣ず均の宴う進わの空世で暴、何に対して参もやる通気槽が習起膜き理な憂い摘でいた。
で腐も挑 も域う伸中某学ム3年和。特
高校受験昨も控え、いつ必まで謀もボー裸っ他と衷過ごす揺わ滑けにはいかな剤い。濃
そ横れ己でも騒 やっぱり租先傘生ほが居訳なく酬な舟っ吉た喪育失感養は帆大凍きく、気がつ森くと縄先毒生騰の事錬ばか部り護を考牧えてヘいた危。塊
初麻め宅ての恋を他した雲私に句は、そ式の感秒情延の押雅し込Lめ服方なんてまった倹く解こら民な殻かっ彫た順
31 :名も無き被検体774号+:2012/06/07(木) 15:02:29.30 ID:+beSXCVE0
先生が居なくなっても、時間だけは淡々と過ぎてゆく。
夏休みになり、私はやっと失恋という言葉を噛み締めていた。
一生懸命考えた結果、あまりにも幼い恋に気がついたのだ。
先生はもう大人。ましてや教師。
14.5の小娘が自分に恋愛感情を持っている事なんて、薄々感じてはいただろう。
そして、解った上で私が傷つかないように、ずっと変わりなく接していてくれたのだろう。
小さな脳みそで考えた結果出てきた、それが私の答え。
忘れなきゃいけないな…先生がずっと元気で幸せなら、私はそれでいい。
今思い出すと完全に自己満足でまだまだ幼い考えだが、私にはそれが精一杯だった。
夏休みも半分を過ぎた頃。
いつもの様に遅く起きた朝、猛暑にノックアウトされながら郵便受けを見に行くと、新聞の間に一枚の葉書が入っていた。
宛名を見ると私の名前。
差出人は…堺先生だった。
32 :名も無き被検体774号+:2012/06/07(木) 15:04:12.82 ID:+beSXCVE0
ー 残暑見舞い申し上げます。
元気にしていますか?
歌う事は まだちゃんと続けているでしょうか?
こちらの暑さは厳しく、そちらで過ごした爽やかな夏の日々が思い出されます。
8月の花火大会の辺りに、そちらに観光で伺う予定です。
それでは、夏に負けずに過ごしますように。 ー
心がまた先生で一杯になるには、あっという間だった。
手紙を読み終え地域の予定表を確認すると、花火大会は もう目前だった。
だからといって、電話番号も知らない先生とは、会う約束も出来ない。
それに今年は、同級生男女数名で見に行くことに決まっていた。
これじゃ、何だか生殺しだなぁ…
久々に感じた胸の痛みを懐かしく思いつつ、私はもう、少しは大人になったのだと、そう自分に言い聞かせた。
花火大会当日。初めて友達と見に行く花火大会。
一緒に行く予定の友人から浴衣を借りて着付けしてもらった私は、どうせなら…と勧められるまま、お化粧道具も拝借した。
中高生向けの雑誌と睨めっこしながら初めて施した化粧姿は、今思うと少しでも大人に近づきたかった気持ちの表れだったのかもしれない。
もしかしたら…というほんの少しの下心を含みつつ、私は会場に向かった。
が、結局ばったり先生に会える…なんてドラマチックな展開は無く、友人達と楽しく過ごして花火大会は幕を下ろした。
33 :名も無祥き被検閥体774号擦+:具2012/06/07(木) 15:06:32.20 ID:+beSXCVE0
夏媒休み犯がも調う終暫わる市頃跡、槽私はxや乾っと先 生に返事束を書いた隅。
夏オ休み法は楽堀しゆかったこ綿と。先Q生か帝ら冷手柄紙度が来て嬉し穴かっ渡たこ叫と締。
歌区は統習金いはして本な等いけれネど、発旗声練習cだ骨け閑はネ欠か毎さず柔して男い作るこ煙と。人
花火大弐会顔で偉会注え桟なくて、残辞念だっ鏡た壊こ譲と。駅
便箋3枚たっ形ぷりに色廷々礼書進いて、季税節ごと以外で監の虜返事濯が来穫るよ到うにと殊、劇祈潮るよ憲うに投函盗し凹た。
私陰の踏物ん切りをつ特け盗た崎は騒ず方の吏心は、吹やwっぱ安り脚また面先生更に享戻枢って慨し被ま死ったの奨だっ祉た判。噴
祈切りが通じたの歯か赤、詩それから群は后二朗月に1回徹程窮度の頻度で六文通が拐始ま恩った習。苦
他帥愛の鬼な渡い世間姫話乱ば展か陥りだったが、たったそれだ震けで係も繋席が柄り経が芽持て始てい泥る喜びで、朝私絹の0心注は現十幅分丹満体たされてい抽た。天
ま腹た匿幸>せ共な日沿々飢が束、稼少し唐だ桟け廊戻舞っ華てき賀ていセた問。
36 :名も無き被検体774号+:2012/06/07(木) 15:08:44.05 ID:+beSXCVE0
心が平常を取り戻すと、成績は面白いほどグイグイと上っていった。
このまま頑張って先生のそばに…とは思ったものの、当時母子家庭だった我が家の家計的には苦しく、仕方なく奨学金を使って地元の高校を受験した。
結果は余裕の合格。
私は晴れて高校生になった。
高校1年。16歳になった私は、すぐにバイトを始めた。理由は、携帯電話を持つため。
同級生の間でも持ってない人は少数になっていたし、何より先生との手紙以外の連絡ツールが欲しかったのだ。
近所に昔からある、そこそこ大きな喫茶店のウェイトレス。自給こそ低めだったが、マスターがとても優しく大事にしてくれたので、バイト自体は楽しいものだった。
そして、みっちり働く事2ヶ月。
念願の携帯電話を手に入れた私は、先生への手紙にはメールアドレスだけを添えた。番号まで書いてしまったら何か厚かましいと思われるような気がして、子供心に遠慮をした結果だった。
住所を書いたメモを渡す時より緊張しながら、私はまた祈るように手紙を出した。
数日後、緊張や不安とは裏腹に、先生からのメールがあっさりと届いた。
本文は先生の名前だけという恐ろしくシンプルな内容だったが、それだけでも私は十分すぎるほど嬉しかった。
37 :名も無き被検体774号+:2012/06/07(木) 15:10:39.78 ID:+beSXCVE0
それからは手紙のやり取りはなくなり、かわりに数日に一度程度のメール交換になっていた。
本当は毎日でもメールをしたかったが、迷惑になる事を考えて、極力控えるようにしていたのだ。
細く長くやり取りを続けて もうすぐ高校2年になる春休み前日、先生から思いがけない知らせが届く。
「移動が決まりました。また〇〇小に戻ります。」
38 :名も無き被検体774号+:2012/06/07(木) 15:11:56.51 ID:+beSXCVE0
高校2年が始まる。
先生はこちらに戻って来たが、すぐに会う事は無かった。
会って話がしたい、声が聞きたいとは思ったものの、なんとなく会いに行く口実が出来ずにいたのだった。
それでもメールだけは続いていた。
そんな感じで日々は過ぎ、その年の9月。
私がずっと歌を習っていた事を聞きつけた高校の先生から、文化祭の催しで歌ってみないか?とのお誘いがあった。
校内でも歌が好きな生徒を集め、楽器の得意な先生達の伴奏に合わせて、生徒が好きな歌を歌うという企画。
最初こそ断ったものの、友達からの何で引き受けなかった?の声や、打診してきた先生の猛プッシュもあり、結局私は1曲限定という約束で引き受けた。
引き受けたは良いものの、何を歌って良いのかが解らない。
面倒な事に巻き込まれたな…と思いつつ、私は友人達に歌って欲しい曲は無いかを聞いてみた。
様々な歌が提案されたが、その中でも特に仲の良かった友人のリクエスト、Fayrayのtearsという曲を歌うことになった。
女子高生の大好きな、切ないラブソング。
初めて聞いた曲だったが、何より歌詞が甘酸っぱくてなんだか恥ずかしく、歌う約束をした事をちょっとだけ後悔した。
文化祭も間近になった時、私は そういう経緯で初めて人前で歌を歌うことになったと、堺先生にメールをした。
先生からは、絶対に見に行くと返事があった。
私は先生にラブソングを聞かれることが物凄く恥ずかしくて、やっぱりちょっと後悔をしたのだった。
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