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「機械と少年」
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43 : ◆Z3ayXtoR4DEE :2013/10/30(水) 01:21:23.02 ID:/HCJFoLsP
口をつけようとすると微かにアルコールの匂いがした

勇「・・・酒?」

酒など飲まないし、高級な酒などなおさら知らない
グラスを持ったまま立ち尽くしていると

「あなたおいくつ?」

今度は若い女が声をかけて来た

勇「え・・・?」

女「それはお酒です。未成年は飲めませんわ」

勇「え、ああ・・・そうですね・・・」

歴戦の兵士でも全く馴染みのないところに
放り込まれれば子猫同然だな・・・と自分で思ってしまった
女がそっとグラスを受け取りさっきの男に
グラスを戻し代わりに別のグラスを持ってきた

女「これなら大丈夫ですわ」

そう女は微笑んんだ

グラスを受け取る手が震えていて自分でも情けなくなった

女「もしかしてこういう場は苦手?」

見透かされていた

勇「・・・ええ。護衛として付いてきただけですので・・・」



44 : ◆Z3ayXtoR4DEE :2013/10/30(水) 01:28:29.84 ID:/HCJFoLsP
女「あら、私もお父様に付いてきただけですわ。お揃いですね」

ふふふ、と笑う目の前の女の余裕さがすごく羨ましかった

女「私はティーナと言います。あなたは?」

勇「あ、天霧いしゃm・・・」

噛んだ・・・

全身が熱くなる
今までの一生で一番恥ずかしかった

ティーナ「緊張しなくても大丈夫ですわ。天霧さん」

勇「・・・・」

もしここが戦場なら迷わず自害を選ぶような状況だ

ティーナ「護衛・・・ということは警察の方?」

勇「い、いえ・・・軍人です。」

ティーナ「あら、そうでしたか」

何かしら反応する度に微笑む彼女が眩しくて直視できない

ティーナ「同年代の方にお会い出来て嬉しいですわ」

同年代・・・・



45 : ◆Z3ayXtoR4DEE :2013/10/30(水) 01:36:02.87 ID:/HCJFoLsP
そこで初めて彼女をまじまじと見た
確かに自分より少し年下くらいだ
綺麗な金髪、青い瞳
100人が100人間違いなく美人と答えるであろう容姿だ
それに凄く上品だ
その奥でシェフにレシピを詰め寄るように
聞き出しているリートにはない上品ささ

ティーナ「ここでは少し騒がしいですわね。少しお付き合いいただけます?」

勇「え・・・」

ホルン司令を見るとこっちを見てなにかニヤニヤしている

ティーナ「さ、こちらです」

そっと手を引かれ会場から出る
外はもう真っ暗で会場の明かりが庭を煌々と照らしていた

ティーナ「どうもああいう席はお酒臭くて苦手ですわ」

酒臭いなどスティーアのバーに比べてば全く無臭なのだが
俺の価値観はゴミ以下だと思い知らされたばかりなので

勇「・・・そうですね」

としか言えなかった



46 : ◆Z3ayXtoR4DEE :2013/10/30(水) 01:44:40.38 ID:/HCJFoLsP
ティーナ「先ほどお聞き出来ませんでしたね」

勇「え?」

ティーナ「お名前です。いさ・・・?」

勇「勇です」

ティーナ「勇さんですか。素敵なお名前ですね。」

素敵な・・・などと人生で一度も言われたことがない
ようやく目が元の機能を取り戻した

ティーナ「ん〜・・・!やっぱり騒がしいのあまり得意ではありませんね」

勇「・・・じ、自分もです」

嘘だ。
爆薬や銃声が鳴り響く場所を職場としている自分が
騒がしいのが苦手などギャグにもならない



47 :名も無き被検体774号+:2013/10/30(水) 04:32:44.77 ID:E+yxHRer0
モテモテですね


48 :名も無き被検体774号+:2013/10/30(水) 07:37:13.55 ID:9DkwU+BV0
あらゆる方面からね



58 : ◆Z3ayXtoR4DEE :2013/10/31(木) 07:04:19.00 ID:TWM4QSo+P
ティーナ「勇さんはこのようなお仕事をいつも?」

勇「い、いえ。本来ならば作戦実行部隊といって最前線で・・・」

つらつらと説明したが 正直ほとんど分かってもらえなかったと思う
それでもティーナは相づちをうち頷いて聞いていた

勇「元はスティーアにいたのですが任務やゴタゴタでいろいろなところへ行きました」

ティーナ「へぇ・・・!どんなところへ行かれたのですか?」

勇「まず、スティーアは砂漠地帯で・・・」


身振り手振りを織り交ぜながら自分が見たものや出会った人について説明する
もちろん機密に当たる部分や話せないこともたくさんあったが
それを差し引いても随分と長い話になってしまった

勇「ツイッターンは一面真っ白の土地で昼間はサングラスのような物が無いと・・・」

こうして思い返せば色々な所へ行かされたな・・・




66 : ◆Z3ayXtoR4DEE :2013/11/01(金) 00:45:12.37 ID:b+mMVxhIP
勇「あ、すみません。つい一方的に話すぎてしまいました・・・」

ティーナ「いえ、凄く面白いです!勇さんは旅する軍人さんなのですね!」

旅する軍人・・・?

勇「まぁ、そんなとことろです」

ティーナ「私も旅をしてみたいですわ・・・」

勇「どこか行きたい場所が?」

ティーナ「そういう訳では無いのですが、自分の生きる世界を
     もっと知りたいとずっと思っているんです」

勇「自分の生きる世界・・・」

ティーナ「私はこのエアーホルンから殆ど出たことがありませんし、
     出ることも許されていませんから・・・」

勇「出ることが許されていない?」

ティーナ「仕方ないです。このような家に生まれたからにはこれは運命ですから」

この人は自分とは正反対だなと思った
俺は家を失い貧しかったが自由だ
彼女は家に縛られ裕福だが・・・


遠くから一人の男が駆け寄ってきてティーナに耳打ちする

ティーナ「わかりました。すぐに行きますわ」

どうやら誰かに呼ばれたらしい

ティーナ「とても楽しいお話を聞けてよかったです。」

勇「自分もその・・・楽しかったです」

俺も司令の所に戻り再び護衛を再開する




67 : ◆Z3ayXtoR4DEE :2013/11/01(金) 00:51:21.57 ID:b+mMVxhIP
しばらく経ちパーティーも終盤に差し掛かった頃・・・

リート「あの料理は凄い美味しいんですよ!今度作ってあげますね!」

勇「それでさっきシェフを締め上げt・・・!?」



今の匂い・・・


いや、匂いというより気配だ
すれ違った男からこの場に不似合いな
何か覚悟を決めたような気配を感じ取った
戦士の勘という奴かもしれない
その男が内ポケットに手を突っ込んだ
視線は数メートル先にいる初老の男性
その手に握られているのが拳銃だと判断すると同時に
俺は走り出した

勇「待て!!!」

男は俺の声に動じず拳銃を男性に向ける
SPが動き出すが遠すぎる



>>次のページへ続く
 
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