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俺と犬と女の子の話
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51 :名も無き被検体774号+:2012/03/22(木) 22:57:32.01 ID:b3AJ9Qi6O
恵さん、良い人だね。



52 :名も無き被検体774号+:2012/03/22(木) 23:03:46.48 ID:mav3knV20
それまで俺はネット等で色々と情報を仕入れていた。

その結果、日本で一番レベルが高い(上位層という意味で)は九州じゃないかと思っていた。

春は全然出ていなかったけど、今回の秋の競技会にはその九州からアマチュアが4頭(1頭は別競技)出ていた。

そして見事に3頭中2頭が決勝戦に残った。

さらに別の1頭は昔からの知り合いだった。

知り合いがB班、九州勢はC、E班、俺がF班だった。

決勝戦はA班から順番に行われていく。A班トップはあまり覚えてない。

続くB班の知り合いは大ミスも無く無難な結果。たぶん緊張してたんだと思う。

彼女が終わってからは2人で全然関係ない話をして盛り上がっていた。



53 :名も無き被検体774号+:2012/03/22(木) 23:05:32.98 ID:mav3knV20
でもその中で見えてくる各ペアーの競技。

C班の九州勢は大ミスは無かったけど、所々余分な動きが目立った。

ただ一言で言えば「キレイな作業」に尽きる。

D班もあまり覚えてない、ごめん。

E班の九州勢は、間違いなく決勝戦に残った中では一番良かった。

でも残念ながら途中で大ミスをかました。

そんな中自分の出番が回ってきた。



55 :名も無き被検体774号+:2012/03/22(木) 23:11:21.32 ID:mav3knV20
先に終わらせた知り合いに「じゃあ行ってきますw」と言ったも
のの、かなりgkbr状態だった。

これまでも何度か決勝戦には残っていたけど、久し振りに緊張した。

決勝戦の科目は7つ。

最初の2つはどんな動きをしたのかよく覚えていない。その緊張が解けたのが3科目目。

犬を呼び寄せて横に付ける(招呼という科目)ものだった。

犬を待たせて10m先まで歩き、審査員の指示で犬を呼び寄せた。

ライリックはいつも以上のハイテンションで自分の前に座った。

続く審査員の指示で犬を直接左側へ付けた。

その瞬間だった。観客から歓声と拍手が上がった。

通常決勝戦で歓声や拍手が出ることは無い。

黙って見ているのが暗黙の了解となっていた。

すぐに審査員が観客を諌めたけど、これで我に返ったし自信が持てた。自分でも通用する。


56 :名も無き被検体774号+:2012/03/22(木) 23:16:10.65 ID:mav3knV20
そこから4科目はいつも通りにできたと思う。

100%では無いにしても、ある程度自信を持てる内容で決勝戦を終えた。

ちなみに最後のG班は北海道でクレームを付けたらしいペアーだった。

全競技終了後、各々に講評が出される。

全てを逐一見たわけではなかったけれど、各々は俺が思った所を指摘されている印象だった。

そして6番目に俺の番が来た。

「犬の方を全く振り返らない姿勢が非常に素晴らしかったです。」

競技会に出るたびに先生に言われていたことが、しっかりと反映された瞬間だった。

所々指摘は出たものの、最後も「素晴らしかったです」で締めくくられた。

最終的には優勝。

名目上はこの半期のアマチュア日本一になった。



58 :名も無き被検体774号+:2012/03/22(木) 23:19:59.25 ID:mav3knV20
すぐに訓練所に電話をして報告。先生は手が離せなかったので奥さんに伝言を頼んだ。

その電話を切ってから今度は逆に俺の電話が鳴った。

ディスプレイを見ると「恵ちゃん」と出ていた。

俺「もしもし。今終わったよ。」

恵「うん、かっこよかったw」

俺「え?」

恵「後ろ」

振り返ると恵がいた。しばし呆然と携帯を握りしめる俺に、恵は笑いながら近づいてきた。

「おめでとう」



59 :名も無き被検体774号+:2012/03/22(木) 23:23:51.67 ID:dWARzIQj0
恵ちゃん

いい娘だなぁ


60 :名も無き被検体774号+:2012/03/22(木) 23:24:04.33 ID:mav3knV20
それからしばらく話をした。

春はどうかと思ったけど、今回は勝てるだけの要素があったと思う。だから決勝戦に残ればそれだけでも見ようと思った。

でも本当は友達の家に遊びに行く予定があったからついででしかない云々。

いわゆるツンデレなんだと思う。



恵「最初緊張してたでしょ?」

俺「めっちゃw」


恵「でも招呼の後半から良かったね」

俺「あそこの歓声で吹っ切れたわ」


恵「>>1のあの動作は、私が見た中では一番キレイだしねw」


それから恵は散々お祝の言葉を投げかけてくれた。しばらくすると友達と一緒に会場を去った。友達と一緒にいたのは本当だったらしい。



57 :名も無き被検体774号+:2012/03/22(木) 23:18:04.50 ID:0FpYAuAX0
同年代の獣医だけど見てます



61 :名も無き被検体774号+:2012/03/22(木) 23:28:50.17 ID:mav3knV20
>>57
最近どうよ?


それから2週間後、2年前に大失敗をし、1年前に同点で決勝戦を逃した競技会がやってきた。

本部競技会で勝ったのもあったし、3度も繰り返せないという想いもあった。

「普段勝ち負けはそれほど気にしないけど、今回は(優勝)取りに行くわ」と恵に言って当日を迎えた。

その日は3つのグループに分かれた。

幸い同じクラブの人がいなかったのもあってグループ戦は通過、決勝戦に進んだ。

決勝戦も特に大きなミスも無く終了、3年目にしてようやく優勝を果たした。

が、この日はこれで終わらなかった。



62 :名も無き被検体774号+:2012/03/22(木) 23:31:35.86 ID:mav3knV20
もともとライリックは知り合いから買った犬だった。そしてその知り合いも競技会には出ていた。

その人が決勝戦前に審査員達の会話を聞いていた。

「あの子(俺のこと)は本部で(優勝)取ったから」

「じゃあ今回はねえ……」

結局そういう水面下の話も通せないくらい周りも見事に失敗をしてくれたんだけど、失敗が無ければ最初から審査対象外だったのかもしれない。

そして致命的な言葉がそのあとに待っていた。

それは決勝戦を審査した審査員から直接言われた。

「本当はあんたじゃなくてあのペアー(珍しくMシュナウザーがいた)に取らせたかったんやけどなぁ」

この瞬間に、競技会への熱が一気に冷めた。


63 :名も無き被検体774号+:2012/03/22(木) 23:37:53.78 ID:mav3knV20
その件を恵に言うと「そういう世界だから仕方ないよ。点数に拘る人じゃないと続けられない」と言われた。

恵「>>1は勝ち負けにあまり拘ってないんでしょ?」

俺「ああ、俺は自分が納得するようにやりたいだけ」

恵「うん、でもね、その納得って10点じゃ現わせないの。」

俺「?」

恵「今のJKCの規定では、一定以上は全て10点なのね。だからそれ以上は優劣を付けられないの。そして、>>1はそのレベルに来ちゃったの。」

恵「だからこれからは「できたこと」に対する加点じゃなくて、「できなかったこと」に対する減点が強調されると思う。」

恵の言うことは尤もだった。

そもそも採点基準が甘いので"それなり"にできれば満点は容易だった。

だからこそ審査員はもしもを考慮して9.9点という点を好んだ。

俺みたいに個人としての納得を求める人間のことなんか最初から考慮されていなかった。


>>次のページへ続く
 
カテゴリー:読み物  |  タグ:青春,
 


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