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思い出の懐中時計
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「あんた、もしかしてお金持ち?」

「あ!あたしをお金持ち扱いしないでください!庶民です!!」

「庶民が学食で、カードをヒラリと『何か問題でも?』と言わんばかりに自信満々に出すな。吹いたわ!」

「だってカード便利だもん」

「しょうがない。俺が奢ってやるよ。カレーセットだな」

「先輩優しい!!小銭も持ってるし!!」

「いや、誰でも小銭持ってるから」

「ほんとですか?じゃあ、あの人も持ってます?」

「持ってるよ」

「すみませーん!!」

何やら「小銭持ってますか?」と聞いている。

「先輩!あの人も小銭持ってました!!」

「聞きに行くなよ!どれだけ好奇心旺盛だ君は」


あれから1年になる。

「この懐中時計さあ、俺が小学生の時貰った宝物なんだ。何かさ、少年探偵団の秘密道具みたいでカッコいいだろ」

「ええ。カッコイイです!」

「そうだろ」

小学生の頃 この懐中時計をもらってから しばらくして、美原時計店は本当に無くなっていた。

ガラーンとした店内。あのお姉さんもいない。

看板の文字も取り外され、空き家になっていた。

「兄さん」
懐中時計に見入っていると妹の雫の声がした。

「おう雫か。どうした」

「いや。見かけたから声かけただけ」

そういえば小林には妹を紹介してなかったな。

「小林ほら。俺の妹の雫。小林と同じ高校2年だ」

「知ってますよー!同じクラスですもん」

「あ、そうなの?じゃ、紹介いらなかったな」

「そうでもないです。雫ちゃんあんまり喋らないから」

「ああ。こいつ人見知り激しいから。初対面の人とかはほぼ無言だ」

「兄さん言い過ぎ」

「いや、そうでもない」

「私が根暗な感じに見えるでしょう」

「その可能性は高いな。でも それはお前の性格が原因だろ」

「またまた兄さんは。私の事大好きなくせに」

「お前こそ俺の事大好きなくせに」


ギュッと握り締める俺と妹の手。


「よし!」

「よし!」

俺と妹はにっこり笑って同時にそう言った。

小林の頭の上にハテナマークが浮かんでいた。

「先輩なんですか?よしって」

「気にするな」

「気にしないでください。小林さん」

「いやいや!気になりますよ!!兄妹でスキって言い合ってなかったですか!!」

「雫」

「いや、兄さんが」

「お前頼む」

「私、国語2」

「いや。盗み見したけどお前5だった」

「勝手に見ないでよ」

「でも許してくれるだろ?」

「許すけど兄さんが言って。あたし喋るの苦手」

「ちょっと先輩達!!暗号みたいな会話しないでください!!」

「暗号といえば踊る人形」

「兄さんでも今さらなネタだと私は思った」

「まあ、マニアにはな」

「得意げにいまさら出されてどう反応しろと」

「お前毒舌」

「そうでもないよ」

「一般のミステリ好きじゃない人は知らないんだから新鮮だし、面白いんだろ」

「ミステリ好きのあたしはどうすれば?」

「あのう先輩達・・・・何の話ですか?」

「ふふん!今さらそのネタでどう楽しめと?って鼻で笑っとけ」

「あたし、超嫌な女じゃん」
「でもそんな雫が好きだぜ!!」

「あたしもよ兄さん!!」


ギュッと再び握り締める俺達の手。


「よし!」

「よし!」

「よしじゃないですよ先輩!!どこから突っ込めばいいんですか!!」

「千春さん。突っ込むなんて女の人が言っちゃ駄目」

「むしろ俺が突っ込もう!!」

「兄さん。千春は下ネタスルー率高し」

「そうなのか?」

「家がお金持ちだから教育が厳しくて その手の情報は入らないの。調査済み」

「何で調査やねん」

「私の兄さんと1年も一緒にいるのに調査しないなんて超無理」

「嫉妬するな。少年探偵団の小林少年と苗字が同じで嬉しかっただけだ」

「せ、先輩そうだったんですか!!そんな理由ですか!!」

「千春さん。ツンデレよツンデレ」

「ツンデレ??」

「兄さん。この娘ツンデレをご存知ないようよ」

「食券をカードで買おうとしてた時になんとなく普通じゃないとは気付いてた」

「そんな事があったの。千春さんちょっとイタイ子」

「そこは見てみぬフリが最善だ雫」

「私無理」

「いや。そこはスルーする優しさだ」

「兄さんはスルーしたの?」

「いや、スキミング防止対策だと教えた」

「余計タチが悪いじゃないの」

「そこはお前俺の優しさだろ。カードが使える訳ないだろうが!!と言えと?」

「ええ」

「お前、将来教育ママ」

「子供を作らなければ問題なし」

「先輩!!いい加減に私に分かる会話をしてください!!」

「兄さん私用があるから」

「ああ」

そう言って妹は去っていった。

「先輩聞きたいことが山のようにあるんですけど!!」

「何だい小林君」

「あたしが小林少年と一緒の苗字だから一緒にいたんですかっ」

「ああ」

「妹さんと両思いなんですか!!近親相姦ですか!!」

「いや、微妙に違う。シスコンブラコンではある」

「好きって言ってたじゃないですか!」

「一度話し合ったんだ。よく近親相姦とかで兄妹でHしたりとか聞くだろ」

「聞きませんよ!!」


>>次のページへ続く
 
カテゴリー:読み物  |  タグ:青春,
 


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