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ドッペルゲンガーと人生を交換した話
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156 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/02/27(土) 22:18:47.50 ID:EjVEnkhT.net
「七瀬……」
「ねぇ、柊、あんたはコピーなんかじゃない。私の名前を大切なものにしてくれたのも、私の手を引いてくれたのも、全部あんた。この世で一人だけの、あんたなの。私が大好きなのはあんたなの。
それでもまだ不安なら、私が証明する、どこにいても何をしていても、あんたはあんただって、私が証明する。あんたの存在を私が証明し続ける。
これでもまだ不満?」
157 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/02/27(土) 22:20:04.46 ID:EjVEnkhT.net
七瀬がここまで言ってくれたんだ、不満なわけがなかった。十分すぎるくらいだ。
「いや、ありがとう……七瀬」
そうだ俺はここにいる。ここにいる俺の、七瀬が好きという気持ちは、俺だけのものだ。
七瀬が証明してくれたことを、誰にも否定なんかさせない。
158 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/02/27(土) 22:20:28.79 ID:EjVEnkhT.net
「そんな……どうして……」
椿が枯れたような小さい声で呟いた
「どうして、どうして僕じゃないんだ。なんでお前なんだ。何が違うんだよ。お前と僕の。どうして……」
そう叫んだ椿の体が、徐々に透明になっていた。
159 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/02/27(土) 22:21:22.72 ID:EjVEnkhT.net
「お、おいどうしたんだ、その体」
俺が聞くと、
「なるほど、僕は消えるわけか」
途端、椿は急に落ち着いた声になった。
「消えるって、どういうことだよ」
「さぁ、でもどう見てもそうでしょ、僕は消えるんですよ。まぁ、ドッペルゲンガーに会っちゃいましたからね、この世に同じ人間は二人いらないんじゃないですか。
それに、実は今日は一週目の僕が自殺した日なんですよ。だから僕は今日までに、貴方を殺して柊京介にならなくてはいけなかった。
しかし僕は失敗し、貴方が柊京介だと証明されてしまった。だから消えちゃうんですよ、きっと」
「七瀬……」
「ねぇ、柊、あんたはコピーなんかじゃない。私の名前を大切なものにしてくれたのも、私の手を引いてくれたのも、全部あんた。この世で一人だけの、あんたなの。私が大好きなのはあんたなの。
それでもまだ不安なら、私が証明する、どこにいても何をしていても、あんたはあんただって、私が証明する。あんたの存在を私が証明し続ける。
これでもまだ不満?」
157 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/02/27(土) 22:20:04.46 ID:EjVEnkhT.net
七瀬がここまで言ってくれたんだ、不満なわけがなかった。十分すぎるくらいだ。
「いや、ありがとう……七瀬」
そうだ俺はここにいる。ここにいる俺の、七瀬が好きという気持ちは、俺だけのものだ。
七瀬が証明してくれたことを、誰にも否定なんかさせない。
158 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/02/27(土) 22:20:28.79 ID:EjVEnkhT.net
「そんな……どうして……」
椿が枯れたような小さい声で呟いた
「どうして、どうして僕じゃないんだ。なんでお前なんだ。何が違うんだよ。お前と僕の。どうして……」
そう叫んだ椿の体が、徐々に透明になっていた。
159 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/02/27(土) 22:21:22.72 ID:EjVEnkhT.net
「お、おいどうしたんだ、その体」
俺が聞くと、
「なるほど、僕は消えるわけか」
途端、椿は急に落ち着いた声になった。
「消えるって、どういうことだよ」
「さぁ、でもどう見てもそうでしょ、僕は消えるんですよ。まぁ、ドッペルゲンガーに会っちゃいましたからね、この世に同じ人間は二人いらないんじゃないですか。
それに、実は今日は一週目の僕が自殺した日なんですよ。だから僕は今日までに、貴方を殺して柊京介にならなくてはいけなかった。
しかし僕は失敗し、貴方が柊京介だと証明されてしまった。だから消えちゃうんですよ、きっと」
160 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/02/27(土) 22:21:43.03 ID:EjVEnkhT.net
「何か方法はないのか、何かあるだろ、助かる方法が」
「ないんじゃないですか。あったとしてまわかりませんし」
「そんな……」
「それに、なんで貴方がそんな焦るんですか。別にいいでしょ僕が消えたって。そもそも僕は貴方を殺そうとしてたんですよ」
椿がどんな人間だとしても、俺を殺そうとしてたとしても、この一週間椿として過ごした俺は、椿が消えるのを受け入れられなかった。
161 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/02/27(土) 22:22:32.96 ID:EjVEnkhT.net
「それでも、この一週間お前を見てきて、お前として過ごして来た俺には、やっぱりお前が悪い人間には思えない」
「なんですかそれ。やっぱ、僕達似てないですね。僕はそんなお人好しじゃないですから。まぁ、そんな貴方だからヒーローになれるんでしょうね」
椿の体はどんどん薄くなっていた。
162 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/02/27(土) 22:22:56.26 ID:EjVEnkhT.net
「それでも、この一週間お前を見てきて、お前として過ごして来た俺には、やっぱりお前が悪い人間には思えない」
「なんですかそれ。やっぱ、僕達似てないですね。僕はそんなお人好しじゃないですから。まぁ、そんな貴方だからヒーローになれるんでしょうね」
椿の体はどんどん薄くなっていた。
163 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/02/27(土) 22:24:53.07 ID:EjVEnkhT.net
「おい、待てよ。まだ何か方法が」
「もういいですよ。僕には柊 京介でいる資格はないみたいですね。
そもそも僕は本当だったら、一週目の時点で死んでいる人間ですから、当たり前かもしれませんね。僕は一度、柊 京介を諦めたんですから」
「そんな……」
「それじゃあ、いろいろすみませんでした。頑張ってくださいね、これからいろいろ……柊 京介さん」
164 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/02/27(土) 22:26:03.40 ID:EjVEnkhT.net
そう言った椿の体はもうほとんど消えていた。
俺はなぜかこの顔を、俺と同じ顔をしたやつが消えていく姿を、忘れちゃいけないと思った。
絶対に。
165 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/02/27(土) 22:27:34.08 ID:EjVEnkhT.net
気づくと椿はもういなかった、
「消えちゃったの?」
七瀬の声はとても小さかった。
「みたいだな……」
多分俺の声もそんな感じなんだろう。
「そっか……悲しいね」
「そうだな……」
「行こっか」
そう言うと七瀬は俺の手をひいて、公園の出口へと向かった。
166 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/02/27(土) 22:28:09.37 ID:EjVEnkhT.net
後日調べてみると、椿 圭介という存在は、最初からいなかったことになっており、覚えているのは俺と七瀬だけだった。
167 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/02/27(土) 22:28:58.30 ID:EjVEnkhT.net
椿が消えてから三日後、俺と七瀬はあの公園に来ていた
168 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/02/27(土) 22:29:18.15 ID:EjVEnkhT.net
「ねぇ、柊」
「何?」
「その……この前ケンカしたって言ったじゃん、親と」
「ああ、そうだったな」
「その理由なんだけどさ、私、またアメリカに行かなきゃいけなくなったの。親がアメリカに戻るんだって」
そんな理由だったのか。
また七瀬と離れなくちゃいけないのか。
169 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/02/27(土) 22:30:39.79 ID:EjVEnkhT.net
「そっか……」
「そっかって悲しくないの?私いなくなっちゃうんだよ?」
「悲しくないわけないだろ。俺だってできるなら行かないでほしいさ」
やっと、七瀬と一緒に居られるようになったんだ。また離れるなんて嫌だった。
「だったらさ……」
七瀬の声が急に小さくなる。
「どうした?」
「だったらさ、助けてよ。私を止めて。アメリカに行かなくていいようにして。……いいかな? 私のヒーロー」
170 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/02/27(土) 22:31:02.46 ID:EjVEnkhT.net
「ハハハ……フゥーハハハ」
あの時の椿みたいな笑い声が、俺の口から出ていた。
「何、急にどうしたの?」
七瀬はその笑い声に面食らったみたいだ。狼狽えている。
「わかった」
「えっ」
「わかったよ。俺が止める。アメリカになんか行くな。俺と一緒に居てくれ」
とても無責任な言葉だ。
でも七瀬が望むなら、俺は無責任でもそうしたかった。
いや、どんな無責任な発言にも、責任を持ちたかった。
「うん、ありがと」
七瀬の返事は単純で、真っ直ぐで、俺はそれがただただ嬉しかった。
171 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/02/27(土) 22:32:03.36 ID:EjVEnkhT.net
まだまだ問題は山積みだ。
俺の学校生活は結局暗いままだし、七瀬のアメリカ行きを止める方法もわからない。
それでも七瀬が隣にいてくれるなら、俺の存在を証明してくれるなら、それだけいい。
それさえあれば、俺が自分の存在を不安に思うことはない。
172 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/02/27(土) 22:32:26.24 ID:EjVEnkhT.net
「ねぇ、じゃあ名前で呼んでよ」
「名前? クリスティーナか?」
「違うそっちじゃない」
俺の未来は希望に満ちている。こっから先は誰にもわからない、椿も経験していない新しい未来だ。
その第一歩に、俺は一番大切な人の名前を呼んだ。
「行くか、千由」
「うん、京介」
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