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涙の色は赤がいいだろ?
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81 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/12(土) 20:51:11.07 ID:msabUvV8.net
そんなことを何回も繰り返すうちに、私は一体何をしているんだろうと思うようになりました。

なんで こんな虚しいことをしてるんだ? と。

私はレンタル家族の派遣をやめにしました。


82 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/12(土) 20:51:28.80 ID:msabUvV8.net
だけど私はレンタルサービスをやめようとは思いませんでした。

もうあの寂しい生活に戻るのは嫌だったんです。

だから今度こそ上手くやろうと決めました。


83 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/12(土) 20:52:01.59 ID:msabUvV8.net
思えば家族という深すぎる関係をレンタルするのには無理があったんです。

だから友達にすることにしました。

そして今度は、相手に自分がレンタルフレンドだと知らずに、私と話して欲しいと思いました。


84 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/12(土) 20:52:22.30 ID:msabUvV8.net
レンタル会社にそう頼むと、一つ案を出してくれました。

それは、普段レンタルフレンドをしてるわけではない何も知らない人を、どこかに呼び出して そこにずっといてもらうバイトとしてお金を払い、私もそこに行き そこでお話をするということでした。


85 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/12(土) 20:54:07.12 ID:msabUvV8.net
その後 友達になれるかは私次第と言われ、少し不安もありましたが、私はそれを頼むことにしました。



86 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/12(土) 20:54:35.18 ID:msabUvV8.net
そしてバイトをしてくれる人も見つかり、場所も人気のない公園に決まりました。

そして決行の日、私は彼に話しかけました。


87 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/12(土) 20:55:02.07 ID:msabUvV8.net
「涙の色は赤がいいと思うんですよ」


88 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/12(土) 20:55:59.97 ID:msabUvV8.net
「これがこのバイトの真実です、本当にすみませんでした。私はお金で買ったんです、あなたを。最低ですよね……」

俺は何も言うことができなかった。

真実は俺が想像していたよりも あっけなく、それなのに悲しいものだった。


89 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/12(土) 20:57:05.60 ID:msabUvV8.net
なんかもっと大きな陰謀とか謎がこのバイトにはあると思ってた。

その想像に比べたら よっぽど簡単な真実のはずなのに、それなのに俺にとってこれは とても悲しいものだった。


90 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/12(土) 20:57:27.77 ID:msabUvV8.net
「本当にごめんなさい…… もうここには来ません、あなたの前にも現れません。

本当にすみませんでした。

私には無理だったんですね、友達とか家族とか。

私はそんなもの望んじゃいけなかったんです」


そう言い残すと彼女は走って公園から出て行った。


91 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/12(土) 20:58:13.01 ID:msabUvV8.net
俺はそれを止めることができなかった。

なんて言ったらいいか わからなかったんだ。

最低なのは俺の方だ、こんな時かける言葉もわからず、引き止めることもできない。

本当、最低だ……


92 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/12(土) 20:59:48.23 ID:msabUvV8.net
気づくと もう日が落ちて、暗くなっていた。

彼女が公園を出て行ってから もう何時間も経ったのに、俺は まだここから動くことができなかった。

俺は いつまでここにいるんだろうか。彼女を追いかけるのか、家に帰るのか、どっちかでもすればいいのに。

俺はどっちもできないんだ。

ここにいたって何にも変わらないのに。

本当、俺は弱いな……


93 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/12(土) 21:00:50.83 ID:msabUvV8.net
「どうしましたか? こんなところで」

突然横から声が聞こえた。

顔を上げてみてみると、そこには二十代後半くらいの男性がいた。

「大丈夫ですか? 何かあったんですか?」

大方、ベンチに座って俯いてる俺を見て、心配になって声をかけたんだろう。

おせっかいな人もいるもんだな。


94 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/12(土) 21:01:41.51 ID:msabUvV8.net
俺は誰とも話したくなかった。

何も考えたくなかった。

だから、この人にどっかに行ってもらうためにも、頭によぎった一つの言葉を そのまま言った。


95 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/12(土) 21:02:36.06 ID:msabUvV8.net
「涙の色は赤がいいだろ?」



96 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/12(土) 21:03:17.08 ID:msabUvV8.net
なんでこの言葉を選んだのだろう?

彼女の顔が頭に浮かんだ。

まぁ、いい。なんにしろ、こんなわけのわからないことを言われたら、危ないやつだと思ってどこかへいくだろう。


97 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/12(土) 21:04:23.17 ID:msabUvV8.net
しかし彼の反応は俺の予想とは違っていた。

「なるほど、なかなか面白い考えですね。確かに、涙の色が赤だと便利かもしれません。助けを求める涙として目立ちますしね」

なんなんだこの人は、こんなヤバそうな奴にこんなわけわからないこと言われたんだぞ、普通逃げるだろ。


98 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/12(土) 21:05:00.60 ID:msabUvV8.net
「まぁ、貴方がなんで そう思ったのかはわかりませんが、一つだけわかるとしたら貴方に何か悲しいことがあったってことですかね」

「へっ?」

俺の口から間抜けな声が漏れていた。

どういうことだ?

「だってそうでしょ、悲しいことがなかったら涙の色の話なんてしませんよね?」

男性の言葉に一人の少女の顔が頭をよぎった。


99 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/12(土) 21:05:31.73 ID:msabUvV8.net
「そうか、そうだ、そうだったんだ」

今度は大きな声が俺の口から出た。

「どうしましたか? 急に?」

男性は、突然叫んだ俺に驚いたようだ。だがそんなことはどうでもいい。


100 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/12(土) 21:05:56.61 ID:msabUvV8.net
そうだよ、そうだったんだ。悲しくなかったら涙の話なんかしないんだ。

涙の話なんかどうでもよかったんだ。彼女は俺にSOSを出してたんだ。

助けて、と。


101 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/12(土) 21:06:28.00 ID:msabUvV8.net
彼女の顔を思い出す。

すると その笑顔の裏に、真剣な顔の裏に、得意げな顔の裏に、いろんな顔の裏に隠したその目には、赤い涙が流れていた。

彼女は いつも赤い涙を流してたんだ、ずっと。

何が言葉は嘘をつく、だよ。涙だって我慢しちゃうんじゃないか。


102 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/12(土) 21:07:08.50 ID:msabUvV8.net
「どうしました? 大丈夫ですか?」

男性が俺に話しかけていた。

「はい、貴方のおかげでわかりました。ありがとうございます」

俺は早口で そう返した。

一刻も早くここから去りたかったからだろう。

「そうですか、なんのことかわかりませんが、力になれたのならよかったです」

男性は少し戸惑いながらも そう言った。


103 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/12(土) 21:07:39.78 ID:msabUvV8.net
「本当にありがとうございます、あの、お名前聞いてもいいですか?」

「私は磯崎です。これは私の想像ですが、多分貴方にはこれから大変なことが待っているんでしょう。どんなことかはわかりません。でも、私も応援してます。頑張ってください」

磯崎さんは とても優しい顔でそう言った。

「ありがとうございます、磯崎さんですね。それじゃあ自分はもう行きます、本当にありがとうございました」

俺はそう言いながら、もう走っていた。

彼女のもとに行くために。

彼女のSOSに応えるために。


104 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/12(土) 21:08:30.93 ID:msabUvV8.net
俺はどこに向かっているんだろうか?

自分でもわからなかった。

彼女がどこにいるかなんて、見当もつかない。

もし俺が青春映画とかのかっこいい主人公だったら、ここで今までの会話から彼女の居場所を導き出してかけつけるんだろう。

だが、生憎俺の青春と呼べる時期はとっくに終わっているし、かっこいい主人公というわけでもない。



>>次のページへ続く
 
カテゴリー:読み物  |  タグ:青春,
 


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