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ドッペルゲンガーと人生を交換した話
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120 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/02/27(土) 21:56:12.67 ID:EjVEnkhT.net
あの日はたまたま、一週目で僕が住んでいた場所の近くに来ていた。

友人と遊ぶ約束だったんだけどさ、そいつが来られなくなっちゃって、仕方ないから帰ろうと駅に向かってたんだ。

そしたらまた会った。でも今度は運命の再会なんかじゃなかった。呪いの、悪夢の再会。

そこに彼女はいた。一週目と同じように、他校の生徒、いや、今回は他校じゃなかった、僕が今通っている学校の生徒に絡まれて、そこにいた。

七瀬 千由はそこにいた。



121 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/02/27(土) 21:56:32.60 ID:EjVEnkhT.net
僕を、人生をやり直した僕を、運命は許さなかった。

僕はどうすればよかったんだろうか?ただ、その時の僕は頭が真っ白になって、何もできずに物陰から、それを見ていた。



122 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/02/27(土) 21:57:40.24 ID:EjVEnkhT.net
それは、一瞬の出来事だった。

本当に一瞬。

気付いたら、いつの間にかあらわれた、僕のドッペルゲンガーが、七瀬の手を掴んで、走り去って、いなくなっていた。

あいつが、まるでヒーローみたいに七瀬を助けた。

柊 京介が七瀬 千由を助けた。

僕は、椿 圭介はただそれを物陰からただ見ていた。



123 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/02/27(土) 21:58:17.95 ID:EjVEnkhT.net
一瞬、何が起きたのかわからなかった。

一体どういうことだ。

僕が、柊 京介が七瀬を助けた。なんで。

僕は一週目七瀬を見捨てた。なんで。

僕が知っている一週目とは別のことが起きている。なんで。

柊 京介がヒーローになっている。なんで。




124 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/02/27(土) 21:59:24.98 ID:EjVEnkhT.net
どうして、どうして僕じゃないんだって何度も思った。なんで七瀬を助けたのが僕じゃないんだって。どうして、なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで

なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで

なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで。



125 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/02/27(土) 21:59:51.48 ID:EjVEnkhT.net
その日、僕はある計画を思いついた。

それを実行するために、その日からたまに、学校を休んで、ドッペルゲンガーを尾行した。

そして念密に入念に計画を練って行った。

七瀬を助けたのがあいつなんて認めない。

あいつが、柊 京介だなんて認めない。

絶対に認めない。



126 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/02/27(土) 22:00:48.62 ID:EjVEnkhT.net
そして一ヶ月後、僕はドッペルゲンガーに話しかけた。

僕が、柊 京介になるために。



127 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/02/27(土) 22:01:48.59 ID:EjVEnkhT.net
「これが僕の人生です。どうですか?面白かったですか?」

俺はしばらく声を出せなかった。

何を言っていいのかわからなかった。



128 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/02/27(土) 22:02:39.60 ID:EjVEnkhT.net
「嘘だ」

やっと出た言葉は、とても小さい声で、聞こえるか、聞こえないかくらいのものだった。

「嘘じゃないですよ。逆に他に何か思いつくんですか、僕達が似ている理由」

「嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ」

「ちょっと、落ち着いて、柊」

そういった七瀬の声も震えていた。



129 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/02/27(土) 22:03:01.10 ID:EjVEnkhT.net
「落ち着けるわけないだろ。こんなの、嘘だ……」

つい声を上げる。

「何回も言わせないでくださいよ。これは真実です。さっき言ったでしょ、僕はあんまり嘘をつかないって」

「こんなの、嘘だろ。なんで、じゃあ俺が生きてきた、十五年はなんだったんだ。お前の模倣なのか。お前が、生きてきた道をただ、たどってきただけなのか」

それは、あまりにも残酷なことだった。



130 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/02/27(土) 22:03:35.44 ID:EjVEnkhT.net
「そうなんじゃないですか。所詮あなたはコピーなんですよ、僕の。貴方初めて会った時言いましたよね、お前はドッペルゲンガーなのか?って。

その時僕言いましたよね、違います、と。繰り返し言いますけど、僕は嘘をあまりつかない。僕がドッペルゲンガーなんじゃない、貴方がドッペルゲンガーなんですよ、僕の。

だから僕は生き残るために貴方を消さなくてはいけない。自分を証明するために」


「じゃあ、まさかあの看板は」


「そうですよ、僕が落としました。貴方を殺すために」


「なっ……」


「まぁ、失敗しましたけどね。貴方も運がいいですよね。まさかあんな寂れた所に、人が通りかかるとは。あっ、知ってますか? 自分の顔をしたやつを殺そうとするのって、結構神経すり減るんですよ」




131 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/02/27(土) 22:03:56.03 ID:EjVEnkhT.net
「どうして……どうしてそんな……」

「どうしてって、許せないからですよ、貴方が柊 京介でいることが、その席に座るべきなのは僕だ」

「そうか……もういいよ……疲れた。勝手にすればいい。どうせ俺はコピーなんだろ。ドッペルゲンガーなんだろ。確かに、消えるべきは俺だ」

もう俺はなにも考えたくなかった。

俺の十五年は。全部決められたコピーだったんだ。そこに俺の意思はなかった。俺に存在する意味はなかったんだ。



132 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/02/27(土) 22:04:22.38 ID:EjVEnkhT.net
「そうですか、よかった、思ったより物分かりいいですね。その通り、貴方はコピーなん……」

「そんなことない!」

椿の言葉を遮ったのは七瀬だった。

「あんたは、柊はコピーなんかじゃない。だった、あんたは私を助けてくれた、何回も、何回も。ねぇ、覚えてる? 私の名前。あんたが意味をもたせてくれた、私の名前」

名前……クリスティーナ……



133 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/02/27(土) 22:04:41.31 ID:EjVEnkhT.net
七瀬クリスティーナ千由。

これが私の名前。アメリカで生まれた私には、クリスティーナというミドルネームがあった。

両親はどっちも日本人だったけど、アメリカで暮らすのに不自由がないようにと、つけられた名前だった。



134 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/02/27(土) 22:05:38.05 ID:EjVEnkhT.net
アメリカではみんな、クリスと私を呼んだ。

この名前は別に嫌いじゃなかった。でも、日本に来てこの名前は枷になった。

日本の学校に転校して、その時も私は、このクリスティーナという名前を特に隠すことはしなかった。

でも、この名前は日本では普通ではないらしく、私はからかわれた。変なの、と。

それから私はこの名前が嫌いになった。



135 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/02/27(土) 22:06:02.68 ID:EjVEnkhT.net
その後も、私は学校に馴染めなかった。

それも当然か、名前をからかわれた日から、私はずっとむすっとした顔で、誰とも話さなかった。誰に話しかけられても、先生も、学級委員の子も、私にしつこく話しかけてくる男の子にも。

本当に可愛くない子供だったと思う。



136 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/02/27(土) 22:06:56.73 ID:EjVEnkhT.net
ある日、また名前をからかわれることがあった。

確か相手は隣のクラスの子達で、アメリカからきた珍しい私を見に来たとかだった気がする。

それで、その子達に、変な名前と言われた。

私は多分、泣きそうな顔をしてたと思う。

でも、それを必死に隠すように、むすっとした顔をしていたんだろう。

あと少しで本当に泣いてたかもしれない。


でも、私が泣くことはなかった。私が泣く前に、私のヒーローが私を助けてくれた。



137 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/02/27(土) 22:07:20.10 ID:EjVEnkhT.net
「変じゃないよ。かっこいいじゃん。クリスティーナ」

彼はそう言った。私にしつこく話しかけ続けてた男の子、柊 京介。

ずっと無視してたのに、それなのに彼は私を助けてくれた。

私の名前をかっこいいと言ってくれた。

この日自分のクリスティーナという名前を、私は大好きになった。

そしてその日から彼が私のヒーローになった。




>>次のページへ続く
 
カテゴリー:読み物  |  タグ:オカルト・ホラー,
 


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