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ドッペルゲンガーと人生を交換した話
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149 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/02/27(土) 22:14:00.73 ID:EjVEnkhT.net
「四回目、どうぞ」

「右」

また正解だ。七瀬は本当に俺がどっちだかわかるのか?どうして?

「…………」

椿はもう何も言えないようだった。

「正解みたいね。じゃあ最後やりましょうか」

そう言って七瀬は後ろを向いた。


150 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/02/27(土) 22:15:07.28 ID:EjVEnkhT.net
「五回目、どうぞ」

椿の声は震えていた。

七瀬は振り向くと、少しの間、黙って動かなかった。やっぱり、わからないのだろうか。

俺がそんな風に思っていると、七瀬は前に進んできた。


151 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/02/27(土) 22:15:36.74 ID:EjVEnkhT.net
そして、俺達の目の前までくると、少し止まって、そのあと、俺にキスをした。


152 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/02/27(土) 22:16:31.12 ID:EjVEnkhT.net
時間が止まっているようだった。

一秒が無限に感じられた。


153 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/02/27(土) 22:16:48.58 ID:7aNrB6uZ.net
はよ



154 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/02/27(土) 22:16:49.54 ID:EjVEnkhT.net
「なっ、どうして、なんでわかった」

椿が焦りを隠さない声で、叫んでいるのが聞こえた。

「私の勝ちみたいね。だから言ったでしょわかるって」

七瀬は俺から離れると、まるで当然の結果のようにそう言った。


155 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/02/27(土) 22:17:25.64 ID:EjVEnkhT.net
「なんで、わかるはずがない、どっからどう見ても一緒のはずだ」

椿が叫ぶ。

「違う、一緒じゃない。この世に柊 京介は一人しかいない。わからないわけがない。ちょっと顔が似ているくらいで、わからなくなるわけないでしょ。優しくていつも私を助けてくれる、私が大好きな柊 京介はあんたよ」

俺の方を見て、七瀬はしっかりとした声で言った。


156 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/02/27(土) 22:18:47.50 ID:EjVEnkhT.net
「七瀬……」

「ねぇ、柊、あんたはコピーなんかじゃない。私の名前を大切なものにしてくれたのも、私の手を引いてくれたのも、全部あんた。この世で一人だけの、あんたなの。私が大好きなのはあんたなの。

それでもまだ不安なら、私が証明する、どこにいても何をしていても、あんたはあんただって、私が証明する。あんたの存在を私が証明し続ける。

これでもまだ不満?」


157 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/02/27(土) 22:20:04.46 ID:EjVEnkhT.net
七瀬がここまで言ってくれたんだ、不満なわけがなかった。十分すぎるくらいだ。

「いや、ありがとう……七瀬」

そうだ俺はここにいる。ここにいる俺の、七瀬が好きという気持ちは、俺だけのものだ。

七瀬が証明してくれたことを、誰にも否定なんかさせない。


158 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/02/27(土) 22:20:28.79 ID:EjVEnkhT.net
「そんな……どうして……」

椿が枯れたような小さい声で呟いた

「どうして、どうして僕じゃないんだ。なんでお前なんだ。何が違うんだよ。お前と僕の。どうして……」

そう叫んだ椿の体が、徐々に透明になっていた。


159 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/02/27(土) 22:21:22.72 ID:EjVEnkhT.net
「お、おいどうしたんだ、その体」

俺が聞くと、

「なるほど、僕は消えるわけか」

途端、椿は急に落ち着いた声になった。

「消えるって、どういうことだよ」

「さぁ、でもどう見てもそうでしょ、僕は消えるんですよ。まぁ、ドッペルゲンガーに会っちゃいましたからね、この世に同じ人間は二人いらないんじゃないですか。

それに、実は今日は一週目の僕が自殺した日なんですよ。だから僕は今日までに、貴方を殺して柊京介にならなくてはいけなかった。

しかし僕は失敗し、貴方が柊京介だと証明されてしまった。だから消えちゃうんですよ、きっと」


160 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/02/27(土) 22:21:43.03 ID:EjVEnkhT.net
「何か方法はないのか、何かあるだろ、助かる方法が」

「ないんじゃないですか。あったとしてまわかりませんし」

「そんな……」

「それに、なんで貴方がそんな焦るんですか。別にいいでしょ僕が消えたって。そもそも僕は貴方を殺そうとしてたんですよ」

椿がどんな人間だとしても、俺を殺そうとしてたとしても、この一週間椿として過ごした俺は、椿が消えるのを受け入れられなかった。


161 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/02/27(土) 22:22:32.96 ID:EjVEnkhT.net
「それでも、この一週間お前を見てきて、お前として過ごして来た俺には、やっぱりお前が悪い人間には思えない」

「なんですかそれ。やっぱ、僕達似てないですね。僕はそんなお人好しじゃないですから。まぁ、そんな貴方だからヒーローになれるんでしょうね」

椿の体はどんどん薄くなっていた。


162 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/02/27(土) 22:22:56.26 ID:EjVEnkhT.net
「それでも、この一週間お前を見てきて、お前として過ごして来た俺には、やっぱりお前が悪い人間には思えない」

「なんですかそれ。やっぱ、僕達似てないですね。僕はそんなお人好しじゃないですから。まぁ、そんな貴方だからヒーローになれるんでしょうね」

椿の体はどんどん薄くなっていた。




163 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/02/27(土) 22:24:53.07 ID:EjVEnkhT.net
「おい、待てよ。まだ何か方法が」

「もういいですよ。僕には柊 京介でいる資格はないみたいですね。

そもそも僕は本当だったら、一週目の時点で死んでいる人間ですから、当たり前かもしれませんね。僕は一度、柊 京介を諦めたんですから」

「そんな……」

「それじゃあ、いろいろすみませんでした。頑張ってくださいね、これからいろいろ……柊 京介さん」


164 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/02/27(土) 22:26:03.40 ID:EjVEnkhT.net
そう言った椿の体はもうほとんど消えていた。

俺はなぜかこの顔を、俺と同じ顔をしたやつが消えていく姿を、忘れちゃいけないと思った。

絶対に。


165 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/02/27(土) 22:27:34.08 ID:EjVEnkhT.net
気づくと椿はもういなかった、

「消えちゃったの?」

七瀬の声はとても小さかった。

「みたいだな……」

多分俺の声もそんな感じなんだろう。

「そっか……悲しいね」

「そうだな……」

「行こっか」

そう言うと七瀬は俺の手をひいて、公園の出口へと向かった。


166 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/02/27(土) 22:28:09.37 ID:EjVEnkhT.net
後日調べてみると、椿 圭介という存在は、最初からいなかったことになっており、覚えているのは俺と七瀬だけだった。


167 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/02/27(土) 22:28:58.30 ID:EjVEnkhT.net
椿が消えてから三日後、俺と七瀬はあの公園に来ていた


168 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/02/27(土) 22:29:18.15 ID:EjVEnkhT.net
「ねぇ、柊」

「何?」

「その……この前ケンカしたって言ったじゃん、親と」

「ああ、そうだったな」


「その理由なんだけどさ、私、またアメリカに行かなきゃいけなくなったの。親がアメリカに戻るんだって」

そんな理由だったのか。

また七瀬と離れなくちゃいけないのか。


169 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/02/27(土) 22:30:39.79 ID:EjVEnkhT.net
「そっか……」

「そっかって悲しくないの?私いなくなっちゃうんだよ?」

「悲しくないわけないだろ。俺だってできるなら行かないでほしいさ」

やっと、七瀬と一緒に居られるようになったんだ。また離れるなんて嫌だった。

「だったらさ……」

七瀬の声が急に小さくなる。

「どうした?」

「だったらさ、助けてよ。私を止めて。アメリカに行かなくていいようにして。……いいかな? 私のヒーロー」


170 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/02/27(土) 22:31:02.46 ID:EjVEnkhT.net
「ハハハ……フゥーハハハ」

あの時の椿みたいな笑い声が、俺の口から出ていた。

「何、急にどうしたの?」

七瀬はその笑い声に面食らったみたいだ。狼狽えている。

「わかった」

「えっ」

「わかったよ。俺が止める。アメリカになんか行くな。俺と一緒に居てくれ」

とても無責任な言葉だ。

でも七瀬が望むなら、俺は無責任でもそうしたかった。

いや、どんな無責任な発言にも、責任を持ちたかった。

「うん、ありがと」

七瀬の返事は単純で、真っ直ぐで、俺はそれがただただ嬉しかった。



>>次のページへ続く
 
カテゴリー:読み物  |  タグ:オカルト・ホラー,
 


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