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童貞と共に人として大切な何かを亡くした話9【完結】
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521 :ED ◆WayzE/RKE2 :2011/06/01(水) 22:38:37.82 ID:vYoDa/Eq0
結衣と会わなくなって数日。

もう年も変わろうとしていた。

俺は、この頃も日々ロケに追われていた。

いつもなら仕事に逃げれば済むはずだったが この時の俺は、美貴を俺のワガママで傷付けてしまった事へよ後悔や 事務所を外されて、結衣も俺から離れて行き どうにもならない無力感と虚無感に襲われていた。

仕事にも全く集中が出来ない。

朝起きるのが辛く、酒を浴びるように飲んでみるが全く酔えない。

正直限界だったが、仕事だけは何とか終わらせなければと思って踏ん張っていた。



523 :ED ◆WayzE/RKE2 :2011/06/01(水) 22:39:56.35 ID:vYoDa/Eq0
そんな中、大垣からまた呼び出された。


大垣「久しぶり。元気だった?」

俺「元気に見えるか?」


大垣「いや…まあ…」

俺「結衣はどうしてる?」

大垣「まあ仕事は普通にやってる。でもED君とは会いたくないらしい」

俺「そっか…」


俺が居なくても結衣がちゃんとやれてると安心した反面

俺が居なくても大丈夫な結衣を考えて絶望した。


大垣「だから情移すなって言ったのに…」

俺「そうだね…」

この時になって今まで大垣が俺に言ってた意味を理解した。

どこで掛け違えてしまったのだろうか…


大垣「早くヤっとけば良かったのに…」

俺「それは間違っても無いわ…」


そこだけはブレなかった。




525 :ED ◆WayzE/RKE2 :2011/06/01(水) 22:40:59.86 ID:vYoDa/Eq0
大垣「それより本題なんだけどさ…」

俺「何?」


大垣「ED君さ、プロデューサーになってくれないか?」

俺「はぁ?何言ってんの?ディレクターで手一杯だって」


大垣「そうじゃなくてプロデューサーに専念して欲しい」

俺「言ってる意味がわかんねぇ…」


俺は大したディレクターじゃないが、ディレクターという仕事には俺なりに拘りが有った。

生涯ディレクターで居たいと思っていた。

考えようによっては、ディレクターからプロデューサーは出世とも言えるがディレクターにしか興味の無い俺には死刑宣告にも等しい。

俺「なんで?」


大垣「ディレクターは最近○○(俺の下で働いているAD)も育って来てるし、外部からいくらでも呼べる。Pが俺だけじゃ仕事回らないんだよ」

俺「事情は分かるけど俺はPはやりたくない」


大垣「そこを何とかならないか?」

俺「俺がDとしてしか大垣さんとは仕事しない。どうしてもPと言うなら金輪際仕事しないって言ったら?」


大垣「そしたら仕方ない。残念だけどね…」


この時、俺の中で何かが完全に切れてしまった…



527 :ED ◆WayzE/RKE2 :2011/06/01(水) 22:42:48.49 ID:vYoDa/Eq0
俺は美貴から逃げ出し マネージャーとして捨てられ、結衣とも決別し

最後に唯一残っていたのはディレクターとしての自分だった。

でも、それすらも否定されたと思った。


美貴を散々傷付けてまで守ろうとした物なのに結局、全てを失ってしまった。

俺には何も残っていなかった。

孤独が俺の周りを埋めつくしていた。

その日から俺は全てを投げ出して閉じこもった。

残っていた仕事も全部投げ出した。

色んな人達に迷惑かけるな…とは思ったが もう完全に身体が言う事をきかない。

部屋の隅で何もせず、ただただ壁を見つめる日々が続いた。


全てに絶望していた。

感情がある事が辛かった。

希望なんか無ければ絶望しないのに…

最初は、そばにいる人達をただ守りたいだけだった。

理由なんか無い。それが当然だと思っていた。

大垣が困って居るなら少しでも協力しよう。

結衣や夏の未来の為に、何かしてあげたい。

美貴の為に仕事を頑張ろう。

でも、いつしか手段が目的に変わってしまっていた。

大垣は俺が助けてやらなきゃ潰れる。

結衣は俺に依存している。

美貴は俺が守ってやってる。

誰かの為にやっていた事が、何時の間にか俺の為になっていた。



529 :ED ◆WayzE/RKE2 :2011/06/01(水) 22:44:02.31 ID:vYoDa/Eq0
「アイツらは俺が居ないと」なんてしたり顔でいってたのに気が付いたら、俺が周りに依存される事に依存していた。

周りの奴らに無理矢理Yesと言わせようとしていた。

それに気付いた俺は、俺自身に絶望し続けた。

俺には何も無いんだ。

何も無い事を誤魔化す為に誰かの為に必死になってる自分を演じ続けていただけだ。

吐き気が止まらなかった。


ただ時間だけが過ぎる日々。

何も考えたくないのに、思考は止まらない。

永遠に眠って居たかった。目覚める事が怖かった。

起きるといつも震えていた。

その震えに、これが現実だと教えられた。


どれだけ時間が経っただろうか?

この頃の事は今でもあまり正確に思い出せない。


その日も俺は、部屋の隅で終わる事の無い思考の迷路にはまっていた。

そんな時、家のインターホンが鳴り響いた…



531 :ED ◆WayzE/RKE2 :2011/06/01(水) 22:45:27.10 ID:vYoDa/Eq0
この頃、俺は少しでも人と関わりを持つ事が怖かった。

外へ出るのは勿論、電話もメールも果てはテレビやネットまで…

この世の中に人が居る事を認識するだけで怖かった。

そんな中で部屋に響くインターホンの音。

俺は怖くなって動悸が激しくなる。

布団を被って怯えていた。

暫くすると 家の玄関が開いた音がした。

「あ、居たんだ」

聞き慣れた声…

美貴だった。




534 :ED ◆WayzE/RKE2 :2011/06/01(水) 22:46:42.97 ID:vYoDa/Eq0
話もメールもし、インホン鳴らしても出ないし…死んでるかと思ったよ」

美貴がら話す

「何したんだよ?

美貴大丈夫?

っていてれ…」

俺がそうってもなしに美貴は話し続け

なん、ただ会話だ。

もう放っておいてれよ。別れんだよ俺たち」

貴「別れてな…別くないも

俺「出てったお前じゃん」

美貴「出てったんじゃなよ。少し休んでただけだよ」

殿は そう言って、また中身もない話しを繰り返がら掃除や洗濯、家をしている。

俺「別れてくれか?

美貴「嫌!なんで

調俺が悪いだ。ワママのは知てる俺が辛いだ」

美貴「まあ、着いたらゆっくり考えよよ…


何度こん会話を繰り うか



535 :名も無き被検体774号+:2011/06/01(水) 22:47:04.15 ID:BPDhXMTt0
美貴様キター


536 :ED ◆WayzE/RKE2 :2011/06/01(水) 22:48:23.20 ID:vYoDa/Eq0
美貴はその日から、ずっと俺のそばに居た。

俺「ゴメンな…」

美貴「何の事?気にしないで…」

俺「ごめんな…」

いつしか、俺は美貴に謝る事しか出来なくなっていた。

散々美貴を傷付けたのに、美貴は昔と変わらずに俺に話かける。

その優しさが、かえって辛かった…

俺は部屋の隅で動けないままの日々。

それでも美貴は、いつまでも俺に必死に話しかける。

何で俺なんかの為に…

美貴は俺の事を恨んでも当然だ。

でも美貴はまるで何も無かったかのように、昔のままに俺に接してくる。



538 :ED ◆WayzE/RKE2 :2011/06/01(水) 22:49:27.72 ID:vYoDa/Eq0
俺「本当にゴメン。こんな俺の為に…」

美貴「何言ってるのよ。夫婦なんだから当たり前でしょ…」

俺「美貴と夫婦で居る資格なんか俺には無いよ」

美貴「資格って何よ?」

俺「本当にゴメン。俺なんか死んじゃえばいいのにな…」

ふと俺がそう言った時だった。

それまで笑っていた美貴が突然泣き出し、俺に掴みかかってきた。

美貴「オマエッ!何言ってんだよ!! そんなに死にたきゃ私が殺してやるよ!!」

初めて見た美貴だった。

付き合ってる頃から一度も美貴のこんな姿を見た事が無かった。

美貴「そんなに死にたいなら私が殺す…それ以外で死ぬのなんて絶対許さない…」

美貴はボロボロ泣きながら俺を殴っていた…

そして、気が付いたら俺も一緒になってボロボロ泣いてた…




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