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アルミ缶の上に
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83 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/02(日) 21:27:11.57 ID:sUR+JIhz0
少年はファミレスを出てから,少女と手をつないでいた。

放っておくと逃げ出してしまいそうだったからだ。

少女の足取りは重かった。

(帰りたくない)

結構な距離があるが,2人はひたすら歩いた。

少女の歩みは遅いが,少年は根気強く付き合った。

家への距離が縮まるほど,少女の表情は暗くなる。

(そう言えば この子は一度も笑ってないな)

少年がふと思ったとき,繋いだ少女の手がブルブルと震えだした。

少女の瞳は20メートルほど先にある古いアパートを見ている。

「やっぱり嫌!」

少女は少年の手を振り解き,今まで来た道を駆け出していった。

「あ!こら!」

少年は少女を追いかけようと思ったが,アパートの前で言い争いをしている男女を見て,足を止めた。



89 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/02(日) 21:36:12.17 ID:sUR+JIhz0
「このロン!最からよりも あの方が目当てだったんゃないのかい!?」

るせぁ!ガバのババァよりいほうがいのは当たり前ろ!」


部屋着の男女が目もはばず大喧嘩繰り広げいる。

女はたきで男をバシバシと叩き,男を追いそうとしうにた。

は女に少の面影を

もしかしと思い,恐る恐る2人にづく。

「あの

なによ!」

るんが,負じと女に向きる。

「11歳か12歳らいの女の子を預かっているんです,もてお宅の娘さんでは・

髪が長くてい服,ええと・・サンを履

ああ多分うだね」

年の顔がぱっるくなる。

「さっきまでそこにいたんです,連れてきす!」

少女が走っいっ方に駆け出そうとした少年を,母親声が止めた

良いに!



98 :いち ◆PHHpeX7gZE :2007/09/02(日) 21:45:27.23 ID:sUR+JIhz0
「あの子は あたしの男を誘惑したんだよ。こいつ追い出したら別の男連れてくる予定だからね。いないほうが都合良いんだよ。」

母親は はき捨てるように行ってから,バシン!と強烈な一発を男の背中にお見舞いした。

少年は呆然と立ち尽くした。

帰れない,と言っていた少女の言葉がよみがえる。

ただの我がままだと思って強く当たった自分に,一気に後悔の波が寄せてきた。

この男は少女を犯そうとし,母親は少女がいない方が好都合だと吐き捨てる。

少年は少女を追いかけた。




105 :いち ◆PHHpeX7gZE :2007/09/02(日) 21:49:41.41 ID:sUR+JIhz0
少女はひたすら走った。

男から逃げた夜のように,後ろを振り返らずに走った。

親切だった少年は,あの家に自分を戻そうとする。

誰を頼って良いのか分からない。

日も暮れようとしている。

ここがどこだか分からない。家への道も分からない。

それでいいのかもしれない。

帰りたくも無いのだから。


お昼にたっぷり食べたはずだが,胃腸はよほど正常な働きをしたらしい。

正直にグゥと音を立てた。

お昼には少年に笑われた。

今は日が暮れた名も知らぬ街で,少女は途方にくれている。



110 :いち ◆PHHpeX7gZE :2007/09/02(日) 21:55:28.49 ID:sUR+JIhz0
すっかり暗くなると,やはり明かりを求めてしまう。

少女はまたコンビニの前にいた。

ペタンと座り込む。

服を見ると,薄汚れている。

(乞食みたいだな)

以前,何かの本で見たことがある。

空き缶を目の前に置いて,レンガの壁を背に道端に座り込んで,たまに通行人がチャリンチャリンと音を立てて,空き缶の中に小銭を落としていく。

(・・・やってみようか・・・)



115 :いち ◆PHHpeX7gZE :2007/09/02(日) 21:59:19.51 ID:sUR+JIhz0
少女はコンビニの前のゴミ箱を漁った。

空き缶のゴミ箱の中には当たり前だが空き缶がゴロゴロ入っている。

しかし,少女が期待したような,上部のふたが缶切りでパカッと開けられたようなものは無かった。

(イワシの缶詰とか捨ててないのかな・・・。ジュースばっかり)

仕方が無いので少女はジュースの空き缶を目の前に置き,再び座り込んだ。

飲み口の小さな穴には,到底小銭は入りそうに無い。



121 :いち ◆PHHpeX7gZE :2007/09/02(日) 22:02:46.90 ID:sUR+JIhz0
少女はじっと座っていた。

たまにゴミを回収しに店員が来たので,そのときはさっと姿を隠した。

しかし,ただでさえ通行人が少ない上,少女のアイデアは外れたのか,小銭を空き缶に放り込もうとする人はいなかった。



123 :いち ◆PHHpeX7gZE :2007/09/02(日) 22:06:10.31 ID:sUR+JIhz0
少女は膝を抱え,顔を伏せた。

お腹は空いたしとても寒い。

たまに聞こえるバチバチという痛そうな音。

顔を上げると,虫がライトに突っ込んでいた。

自分もあの虫と同じくらい馬鹿なことをやっているのかもしれない。

少女は再び顔を伏せた。

こんどは涙が出てきた。




127 :いち ◆PHHpeX7gZE :2007/09/02(日) 22:13:17.45 ID:sUR+JIhz0
「探したよ」

いつしか眠り込んでいた少女だが,頭上からふる優しい声に,また顔を上げた。

そこにいたのは少年だった。

自転車から降りて,少女の前にしゃがみ込んだ。

「ゴメンな,何にも知らないのに帰れ帰れ言っちゃって」

少女はフルフルと首を振った。

「その缶,なに?空なら あそこにゴミ箱あるよ」

「・・・乞食の真似。そうしてたら誰かがお金入れてくれるかな・・・って」

「いや〜この穴にお金は入らないわ・・・」

少年は苦笑した。

この人はまた,自分をあの家に連れて帰るのか?

少女はいくらか警戒していた。



132 :いち ◆PHHpeX7gZE :2007/09/02(日) 22:22:40.06 ID:sUR+JIhz0
「オレのうちおいでよ」

少女は予想もしなかった言葉に目を見開いた。

「オレ大学生でさ,1人暮らししてんだ。

ずっと・・・ってのは無理かもしれないけど,取り合えず落ち着くところが必要だろう?」

少女は何も言わずパチパチと瞬きを繰り返す。

「お金はあんま無いけどさ,バイト頑張るし,たまにはファミレスにも連れてってあげられるよ」

少女は少年を見つめた。

言葉が出てこない。

「それにこれくらいのユーモアはある。」

少年はコンビニの中に入り,何かを買ってすぐに出てきた。

取り出したのは,みかん。

それを少女の前に置かれた空き缶の上にポンとのせて,指をさし,言った。

「アルミ缶の上に・・・?」

少女はおずおずと答える。

「ある・・・みかん・・・?」

「あったり!面白いだろ?」



「・・・つまんないよ!」

少女は少年を見上げて微笑んだ。



150 :いち ◆PHHpeX7gZE :2007/09/02(日) 22:29:37.07 ID:sUR+JIhz0
皆さんレスありがとうございます。

スレタイとラストだけ思いついて書きはじめたのですが思いもよらぬ長さになってしまいました

wktkの言葉に奮い立たされながら勢いで書きました

明日から3日間旅行なのでまた何か書くとしたらその後に・・・



161 :以下、無しかわりましてVIPがお送りします。:2007/09/02(日) 22:36:25.79 ID:OUAv+Mt70
すれいにい味でうらぎられたよ

す!!!




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カテゴリー:読み物  |  タグ:ちょっといい話, 泣ける話,
 

 
 
 
 
 

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